[携帯モード] [URL送信]

くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
1
 オズさんが国王になってから王宮は暫くバタバタしていた。突然国王が変わったのだから側近や使用人達が動揺するのは当然だ。しかももう亡くなったと思っていたオズさんとエヴァリーナさんが生きていたと知って更に衝撃を受けた。それに加え、獣の国の王とその王妃様も落ち着くまでこの国に滞在すると宣言したので王宮内はそりゃあもう大騒ぎ。

 同じ過ちを繰り返さない為に、信頼できる人材の確保、国民への伝達、オズさんと颯太さんの結婚式の準備、式典、国王達の処罰などなど、兎に角決める事が多くてみんな忙しそうに行ったり来たりを繰り返していた。でも、騎士団の人達は冷静で慌てる事なくオズさんに忠誠を誓っていた。彼らは国王達を一番近くで護衛していた事もあり、彼らの傍若無人さにうんざりしていたと言う。だから彼らは国王よりもアーノルドさんやレナードさんに忠誠を誓っていて、オズさんが国王になる事を密かに望んでいた。その願いが叶って、更には神子である颯太さんとも結婚していて騎士の人達は皆感動して泣いていた。

「ぅう。疲れた。もう、無理」

「お疲れさまです。衣装、決まりました?」

 王宮の人達がバタバタと忙しそうに走り回っている間、俺は何故か客人として広くて豪華な部屋を与えられた。きらきら輝くシャンデリアに、繊細な模様の入った絨毯。見るからに高そうな家具に、天蓋付きのふっかふかの大きなベッド。豪華だけどまだシンプルで落ち着いた色合いなので我慢できるけど、正直今でも慣れなくて早くアーノルドさんのお家に帰りたいのが本音だ。颯太さんも王宮での暮らしに慣れていないようで、何時もクタクタになって俺の所にやって来る。

「オズが、次から次へと持って来て、デザインにも細かく指示を出して、更には靴まで拘ってさ。着せ替え人形みたいに次々と着せられて脱がされてを繰り返してもうクタクタ」

「一生に一度の晴れ舞台だから物凄く張り切ってるんですね」

「俺、まさか自分が王妃になるなんて思ってなくて。みんなから神子様、王妃様って言われて……ぅう」

「分かります。不安ですよね。俺だったら責任重すぎて逃げてます」

 王妃とか俺には絶対に無理だ。だって国の象徴になる訳でしょ? 国民に受け入れられるかとか、こんな自分で本当に大丈夫だろうかとか、色々考えてしまうし、国王程ではなくても責任重大。考えるだけで気が重い。実際王妃になる颯太さんの不安は凄まじいものだと思う。オズさんとリナちゃんが居ると言っても、やっぱり緊張するし。

 最初はエヴァリーナさんって呼んでたけど、彼女から「エイト様も私の事はリナと呼んでください」とお許しが出たので、今はリナちゃんって呼んでる。なんとリナちゃんは十六歳。俺よりも年下だった。俺達の世界だったらまだ高校生じゃん! 高校生の女の子が一人で獣の国に乗り込んで身も心も捧げるとか、本当、本当もう!

 その事に関しては、颯太さんがゆっくりじっくりお話ししてお説教もしたそうだ。お説教が終わった後、リナちゃんが泣きながら「もう、このような事はしません」って言ってたけど、颯太さん一体どんなお説教をしたんだろう。聞きたいような、聞きたくないような。怖いからやめておこう。俺も自分の首を斬って死のうとした事を怒られたし。それと、この時に颯太さんと遼太郎さんの名前の漢字を教えてもらった。俺も自分の名前の漢字を二人に教えると異世界人同士仲良くしようと言ってくれた。颯太さんは前に聞いていた通り三十一歳、遼太郎さんは二十五歳で二人とも大人だった。

 オズさんは二十一歳だと言っていたから、颯太さんと十歳も離れてるんだな。颯太さん、相当悩んだんじゃないかな? オズさんにはもっと相応しい人が居るからとか、おじさんの俺よりももっと若くて可愛い女の子と結婚した方がいいとか。疑問に思って聞いてみるとやっぱり思っていたらしい。

「俺も逃げたいよ。でも、オズが『絶対に逃さない』って、『俺から離れる事は許さない』って言って、えっと、その……ぅう」

 優しく激しく抱かれたんですね、分かります。真っ赤になった顔を両手で覆う颯太さんは年下の俺でも可愛く思えてしまう。この人、本当に三十一歳なんだろうか。こんなに可愛い三十一歳って居る? オズさんが手放さない理由が分かる気がする。

「俺、オズさんと颯太さんが幸せそうで嬉しいですよ?」

「ありがとう。瑛都くん。瑛都くんが一緒なら、頑張れる気がする」

「ん?」

「あれ? 聞いてない? 瑛都くんも此処に住む事になるんだけど……」

「俺が? 王宮に? なんで?」

「アーノルドさんがオズの護衛騎士になるからだよ。レナードさんはリナちゃんの護衛騎士。王家直属の騎士に任命されるから、必然的に二人とも王宮で暮らす事になるんだ。アーノルドさんと結婚してる瑛都くんもね」

「…………」

「それと、今は俺の衣装を決めているけど、俺が終わったら今度は瑛都くんの衣装を決めるから、覚悟しておいた方がいいよ。その時にはアーノルドさんも一緒だからオズみたいに細かく指示するんじゃないかな?」

「衣装って、なんの?」

「何って、結婚式で着る衣装だよ? ウエディングドレスって言った方が伝わるかな?」

「えぇええええええ!」

 な、ななな、なんでそんな大事になってるの!? なんで俺まで衣装を決めなきゃいけないの!? ねえ、なんで!? 俺、アーノルドさんの家の方が落ち着くのに! いや、あっちもそれなりに広くて綺麗だけど、まだ家庭的と言うか、庶民的と言うか、過ごしやすいんだよな。こんなきらっきらした部屋で過ごすなんて俺には無理! 絶対に無理!

[次→]

1/13ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!