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くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
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 獣の国と同盟を結ぶ為には幾つか条件があり、神子を王妃にする事が絶対条件だとか。遠回しに言ってるけど、リョウタロウさんとシロガネさんが言いたいのは、ソウタさんと結婚したオズさんを国王にしろって事なんだよな。つまり、俺達が見ているのは歴史的瞬間ってヤツで、今後の国の未来を左右する大切な分岐点。もっと簡単な言葉で表すなら「革命」だ。

「これが守れないなら、俺達はこの国を滅ぼす。当然だろ? 俺達の国を脅かす存在を野放しになんざ出来るか。今は神子だけにご執心のようだが、それが何時俺達獣人に向けられるか分かったもんじゃねえ。獣人はテメエらの奴隷じゃねえんだよ」

 選択の余地がない。オズさんを国王にしなければ国自体が滅ぶ事になる。非道で一方的な条件に見えるけど、シロガネさんが両国を思って出した最良の考えでもある。オズさんが国王になれば、間違いなくこの国は発展するし、迫害や差別も少なくなるだろうし、何よりこれからやって来る神子達が安心して暮らせるようになる。

 国にとっても、国民にとっても、俺達異世界人にとっても、オズさんが国王になるのは有り難い。オズさんが間違った選択をしてしまった時、ソウタさんが止めてくれるから今の国王のような独裁政治は絶対にしない。人を人とも思わない、神子を都合の良い性欲処理の道具程度にしか思っていない彼らと比べるまでもない。

「神子を王妃にと言うなら、私の妻になれば良いではないか! 何故私ではなく、そんな奴が神子を手に入れるのだ!」

 え? 何言ってんの? この変態オヤジ。今までソウタさんに散々酷い事をしておいて、妻になれ? 国王が怒り出したら、第二王子と第三王子も同じ事言い出すし、周囲に居る貴族達も口々に「ならば私の方が神子に相応しい!」とか叫び出すし。何これ?

「神子よ! 私の妻になると言え! そうすればお前が逃げた事は許してやろう! 他の者達にも触れさせぬ! お前が望むならどんなものでも与えてやろう! こんな王族とも言えぬ者ではなく、私を選べ!」

「え? 嫌だけど?」

「何故だ!?」

「何故って、俺が好きなのはオズだから。オズとリナちゃんに酷い事をした人を好きにはなれないよ。正直もう二度と顔も見たくないし、声も聞きたくない」

 俺、博愛主義でも聖人君子でもないから。ソウタさんが断言すると、国王達は絶望したような顔で彼を見る。ソウタさんは俺達が心配になるくらい優しい人だ。どんな人でも許してしまうんじゃないかって思うくらい心が広くて、他人の幸せを心から祝福できる人でもある。だから、ソウタさんが国王達の申し入れを拒否するのは当たり前だけど、はっきり「関わりたくない」って言ったのは驚きだった。

「ならばお前はどうだ!? 私の妻になれば、どんな願いでも叶えてやろう!」

「え? 俺?」

 まさか俺に振られるとは思わなかった。抱きしめてる腕の力が強くなる。待って。アーノルドさん。これ以上強くされたら俺が窒息死しちゃう。リョウタロウさんはもう呆れて何も言わないし、顔もちょっと前に流行ったチベスナ顔になってる。シロガネさんも頭に手を置いて深いため息を吐いていた。エヴァリーナさんなんて「こんな情けない阿保が、私の身内だなんて」と絶望して気絶寸前だ。

「そんな孤児院出身の男と結婚しても苦労するだけだ! 地位も名誉も身分もない奴より、国王である私と結婚した方が幸せだろう!」

「俺の幸せはアーノルドさんと一緒に居る事だから。 アーノルドさんを殺そうとした奴と結婚とか無理」

「エイト!」

「ぐえ!」

 ちょっと待って。アーノルドさん。力込め過ぎ! 苦しいからやめて! ガチで窒息死する! 嬉しいけどね! 俺、アーノルドさんはエヴァリーナさんの事を好きだと思ってたから。全ての問題が解決したら、アーノルドさんはエヴァリーナさんと結婚すると思ったけど、それはないと確信した。だって、俺の言葉でこんなにも喜んでくれるんだもん。沢山甘やかしてくれて、沢山愛情を注いでくれて、俺を守ろうとしてくれて、こんなに尽くされたら嫌でも好きになっちゃうじゃん。

「だから団長! 顔が他者に見せられないくらい緩んでます! 惚気るのは全てが終わった後にしてください!」

「無理だ。エイトが愛おしすぎて我慢できない!」

「アーノルドさんはずっと自分だけの神子様を求めていましたからね。その願いが叶って、私も嬉しいです。エイト様。これからもアーノルドさんの事、よろしくお願いします。傍で支えてあげてください」

「エヴァリーナ王女まで……」

 エヴァリーナさんからも応援された。うん。アーノルドさんとエヴァリーナさんが結婚は無いな。自分の事のように喜んでくれてるんだもの。まだ全部解決していないし、全く空気を読めていないけど、オズさんもリョウタロウさん達も何も言わないから、知ってて許してるんだろうな。多分。

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あきゅろす。
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