くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
3
俺が無事なのを確認すると、アーノルドさんは何度も「良かった」と言って俺を強く抱きしめた。首の傷が広がらないように気を付けながら、それでももう離さないと言うように腕の中に閉じ込められる。レナードさんも泣いていて「もう、こんな事しないと約束してください」と言われた。震えて泣く二人を見て、馬鹿な事をしてしまったと思い知らされた。
「アーノルドさん、レナードさん。ごめん、なさい」
「もう、しないでくれ」
「はい」
残された人がどれだけ悲しむのか、苦しむのか、俺が一番知っていたのに。自分の事ばかりで、アーノルドさん達の気持ちを全く考えていなかった。死にたかったのは事実だけど、それはもう過去の話で、本当はアーノルドさんと生きたい。幸せになりたい。沢山、愛してほしいし、俺もアーノルドさんを愛したい。もう一度謝って、俺もアーノルドさんを抱きしめた。
「獣の国の王が、何故此処に……」
「ぁあ? 俺が此処にいちゃ悪いのか?」
「まどろっこしいのは嫌いなんだ。率直に言うぜ? 同盟を結びに来た」
また周囲がどよめいた。獣の国? 初めて聞く国だ。
「獣の国って、獣人が統べる国ですよね? ですが、獣人は人間を嫌っていて、何処の国とも同盟を結ばず、交易もせず、独自に発展した国の筈。それが何故、今になって同盟を?」
「分からない。昔は人間と獣人で戦争をしていた時代もある。今でも獣人と人間は仲が悪く、同盟など結べる筈が……」
「でも、あの黒髪の人、人間ですよね? しかも、俺やソウタさんと同じ異世界人」
着ている服はゆったりとした民族衣装のようなものだけど、彼の髪や目の色は黒で、顔立ちも日本人。獣人が人間を嫌っているなら、どうしてあの人は獣人と一緒に居るのだろう? 獣の国の王とか言ってたし、ひょっとして……
「シロガネさんって言う獣人? の、お嫁さん、とか?」
「ほぉう。良くわかったな。小僧。リョウタロウは俺の番だ。人間の言葉では伴侶や妻、と言うんだったか?」
また周囲がどよめいた。と言うか絶叫した。アーノルドさんとレナードさんも驚いている。そんな中、シロガネさんとリョウタロウと呼ばれた人だけは冷静で、驚く人達を見て不敵に笑った。
「俺は矢吹遼太郎。獣の国の王、シロガネの番だ」
文句があるなら言ってみろ? と腕を組むリョウタロウさんは、すごく男らしい。こう言うのを男前って言うんだろうか。もう色々な事が起こりすぎて目眩がしてきた。
「おいそこのチビ! まだ傷が塞がってねえんだから首を動かすんじゃねえ!」
「はひ!」
何、この人。怖いんだけど!? 男前なんだか面倒見がいいんだか乱暴なんだか優しいんだか分からない! シロガネさんはそんなリョウタロウさんをうっとり眺めているし。はっきり言ってカオス。
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