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くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
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 テーブルに置かれたちょっと豪華な昼食を見た途端、レナードさんの目がきらきら輝いた。隣に居るアーノルドさんも少し驚いた様子でテーブルと俺を交互に見る。俺が料理出来ないと思っていたのだろう。失礼な。料理はちゃんと作れるんだよ。一人で生きていけるように、あの人に教えてもらったからな!

「す、凄い! こ、こんな美味しそうな料理、初めて見ました! こ、これ、エイトが一人で作ったんですか!?」

「野菜とか調味料とか俺の居た世界と全く同じだったから助かった。プロじゃないから味は保証しねえけど、食えねえ程酷い味じゃないと思う」

「いや、物凄く美味しそうな匂いが漂っているが?」

「そう? なら多分美味しいんだろうな。多めに作ったから食べてください」

「ああ。いただこう」

「お、俺も、食べていいんですか?」

「レナード、君はこれから王都の見回りだろう?」

「何言ってるんですか? 団長。俺、今日はもう仕事ない『見回り、だよな?』いや」

「見回りなら食べた方が良いでしょう? 腹が減っては戦はできぬって言いますし。レナードさんはアーノルドさんの部下なんですよね? 部下は大事にしないとダメですよ」

「エイト!」

「チッ」

 うわあ、美人がしちゃいけない顔をしてる。アーノルドさんが舌打ちって。そう言う事するような人には見えないのに、一体何がそんなに気に入らないのか。たかが料理一つで不機嫌にならなくても良いのに。俺なんかが作った料理で……

「美味しい! 何ですか! これ! 今まで食べたどの料理よりも美味しい!」

「レナード、静かにしろ。ゆっくり食べられないのか、君は」

「だって、だって本当に美味しいんですよ! 王宮に呼ばれた時に出された料理は冷めててあまり美味しくないし、外食はしますけど味より量の店が多くて……」

「食えるだけ有り難いと思え」

「う、そりゃそうですけど」

「この国の人達って自炊しないんですか?」

 もぐもぐとたまごサンドを頬張りながら聞くと「味より量を重視する」とアーノルドさんから言われた。この国の人達は体格が良くて、女性でも背の高い人が多い。それに加えて少々せっかちで大雑把な性格の人が多い為、料理も大雑把らしい。例えば、肉はそのまま焼くだけとか、スープは野菜を切って煮るだけとか。

「あぁ、下処理とか面倒で省いちゃうんですね」

「下処理?」

「日本では下処理が重要視される事が多くて。ちょっとひと手間加えるだけで手抜き料理でも美味しくなるんですよ」

 一番簡単なのは灰汁抜きとか出汁を取る事だろうか。カレーとかシチューとか作る時には必ず出るから、灰汁を除くだけでも味が違うし、出汁で作る肉じゃがとか味噌汁の方が美味しいとは思う。とは言え、俺も全てを把握している訳じゃないからゆるふわ知識だ。あの人が丁寧に教えてくれた事は一応全部覚えているけど、面倒な時は省いて粉末のものとか野菜やお肉と一緒に煮るだけでいいものを使用している。

「パンに挟んでるの、果物ですよね?」

「それはフルーツサンド。俺の住んでた国で結構人気だったんですよ」

「切った果物をパンで挟むのか。初めて見るな」

「俺も初めてです」

 そう言ってパクッと食べると、二人の目がまた輝いた。美味しい美味しいと言って食べてくれるとこっちまで嬉しくなる。アーノルドさんが食べてるのはイチゴのフルーツサンド。レナードさんはキウイフルーツ。どっちもフルーツサンドの定番だ。

「あぁ。もっと食べたかったなあ」

「レナード」

「良いですよ。何か食べたいものがあったら言ってください。作れるものなら作ります」

「本当ですか!?」

 食べたいものを言おうとしたレナードさんの頭を小突いて、アーノルドさんは「食べ終わったなら出て行け」と告げた。部下に対して冷たくないかと思って注意しようとしたら、レナードさんは「分かりました」と言って出て行った。

「団長の事、よろしくお願いします。あぁ見えて、結構嫉妬深いと言うか、独占欲が強い方なんで」

「え?」

「ご飯、美味しかったです。では、また」

 レナードさんが言った言葉が理解出来ずに固まっていると、アーノルドさんが声をかけてきた。怪我は無かったか、とか、危険な目に遭っていないか、とか。そこで俺はオズさんからもらった手紙を思い出して、アーノルドさんに渡した。


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