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くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
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 次に目が覚めるとアーノルドさんのお家だった。起き上がった時にパサリと何かが落ちたので、それを拾う。どうやら手紙のようだ。オズさんが書いたもののようで、内容は謝罪とお礼。突然拉致して無理矢理襲おうとした事に対する謝罪と、ソウタさんを助ける為に協力した事に対するお礼。

「やっぱり王子様だったのか」

 一番下に書かれている名前はオズワルド・グランディエ。神子が亡くなった翌日に失踪した、この国の第一王子。手紙には更に続きがあり、時が満ちたらソウタさんも連れてきちんと挨拶に向かうと書かれていた。しかし、今はまだその時期じゃないから手紙を読み終えたら処分してほしいとも書かれていた。それと、王宮と神殿には絶対に近付いてはならない事、何かあったら直ぐにアーノルドさんを頼る事と飽きるくらい同じ事が書かれていた。

「エイトは料理もできるんだな。ハンバーグ、ソウタと一緒に食べさせてもらったよ。とても美味しかった。ありがとう」

 王子様なのに、こうしてお礼が言えるのはソウタさんの教育のお陰なのか、元々オズさんがそう言った性格だったからなのか。恐らく両方だろうな。初対面で俺の精液搾り取ろうとした事は今でも驚きだが、アーノルドさん達がオズさんを尊敬して慕う理由が物凄く分かる。オズさんは自分の地位や権力に酔いしれて弱者を虐げる人じゃない。弱い人の気持ちが分かる人だ。しかも、かなり難しい魔法も使えて、勉強もできて、剣術も強くて、国民の事を第一に考えている。オズさんが国王になったら、きっとソウタさんのように異世界の人が苦しむ事は無くなると思う。

「もう一枚あった。こっちはアーノルドさん宛か」

 帰って来たら渡さないとなあ、と思いながらベッドから降りる。あれから何日経ったんだっけ? 二日? 三日? うーん、分からん。取り敢えず、お腹空いたからご飯作ろう。

 野菜や果物、お肉は俺の居た世界と同じものがあって安心した。調味料も基本的なものは全て同じだから安心して料理ができる。違うと言えば、ファンタジーでお約束の魔獣のお肉とか、全ての病に効く薬草があるとかだろうか。とは言っても、これらはかなりの珍味である為、滅多に市場に出回らないらしい。

「あぁ。いい匂い。お腹空いてきた」

 じっくりコトコト煮込むのはとろぉり美味しいお肉と野菜たっぷりのシチュー。煮込んでいる間にサンドイッチも作る。具材は卵と野菜とハム。甘いものもほしいのでフルーツサンドも作った。余った野菜を使ってサラダを作り、後はテーブルに並べてコーヒーを淹れればちょっと贅沢な昼食の完成。

 テーブルにシチューとサンドイッチとサラダを並べて、椅子に座り俺は両手を合わせて「いただきます」と言った。熱々のシチューをスプーンで掬って口の中に入れようとしたら、バンッと大きな音が響いた。

「何なんですか! 国王達のあの態度! この国が平和なのは団長が周辺の魔物を退治しているからだと言うのに!」

「落ち着け。レナード。俺はもう慣れている。いちいち相手にしていたらキリがない」

「でも団長! いくら何でもアレは許せません! 王族だからって何をやっても良いとか思ってるんですよ! 奴らは!」

「気持ちは分かるが、そう叫ぶな」

「何で団長は怒らないんですか! あれだけ馬鹿にされ……むぐ!」

「だからレナード、少しは落ち……ぐ!」

「お帰り。お二人さん。そんなにカッカしないでこれでも食って元気出せよ。な?」

「へいほ!」

「いいはひはひをふふ」

「わー、何言ってるか分からねえや」

 二人の口にサンドイッチを突っ込んでいるから喋れないのは当たり前なんだけど。二人してもぐもぐと咀嚼する姿は何か可愛い。餌付けしている気分になる。

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あきゅろす。
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