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くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
7
 ポタ、ポタ。小さな雫が滴り落ちていく。痛いし苦しいけど、我慢だ。これが終われば俺は解放される。だから耐えろ。俺。何としてでも耐えるんだ。小瓶一つだけでいいんだ。直ぐ終わる。だから耐え……

「もう無理ぃいいいいいい! 痛いよぉおおおおおお! もう良いじゃん! 半分溜まった! これで十分でしょ!?」

「これだけの量で足りる訳ないだろ! 弱音を吐くな! 最低でも三瓶は満たしてもらわないと困る!」

「三瓶!? 無理無理無理! 最初に約束したの瓶一つだったじゃん! 何で二つも増えてんの!?」

「失敗した時の為の保険だ。嫌ならお前の精液を搾り取る事になるが、それでも良いのか?」

「喜んで涙を提供します!」

 言いながらザクザクと大量の玉ねぎをみじん切りにしていく。あぁああああああ! 目が痛い! 涙が止まらない! もうやめたい! でもまだ瓶一つも溜まってない! けれどやらなければ問答無用で精液を搾り取られる。そんなの嫌だし、自分の精液がソウタさんの口に入るのも絶対に嫌だ。汚いじゃん! 好きな人の体液ならとか言うけど、俺とソウタさんは赤の他人だからね! いくら人助けだとしても自分の精液を飲んでもらうのは色々とアウト過ぎて無理!

 だから打開策として涙を提供するとオズワルドさんに言ったのだ。ソウタさんがオズって言っていたので、俺もオズさんと呼ばせてもらう事にした。必要なのは神子の体液。つまり、精液の他に血と汗と唾液と涙がある。この中で一番マシなのは何かと言えば迷う事なく涙! オズさんに「自分の好きな人が赤の他人の精液飲んでるの耐えられるんですか!」と言ったら「そんなの無理に決まってるだろ! 本当は飲ませたくない!」と怒鳴られた。当たり前だ。好きな人のでも抵抗あるわ。それにソウタさんが正気に戻った後、どう説明するの? 俺の精液を飲んだから正気に戻ったんだよとか嫌すぎるわ。それも言ったら「確かに、そうだな」と納得してくれた。

 二人で話し合った結果、ソウタさんに飲ませるのは俺の涙と言う事になったのだ。しかし、そう簡単に涙を流せる筈もなく、オズさんはどうやって俺を泣かせるか考えていた。そんなオズさんに俺が提案したのが、大量の玉ねぎをみじん切りにして強制的に涙を流すと言うものだった。俺の目が痛いが、一番効率が良いと思ったのだ。実際にやるまでは。なにこれ。メチャクチャ辛い。物凄く目が痛い。涙止まらない。それなのに涙が全く溜まらない。何これ新手の拷問?

 目の痛みに耐えながら玉ねぎを只管みじん切りにして漸く小瓶三つ全て涙で満たされた。あぁ、長かった。物凄く長かった。目が痛い。これ絶対目の周り腫れてるでしょ? 良い子は真似しないでね? きっと体に良くない。

「ありがとう。エイト。この涙を治療薬に混ぜてソウタに飲ませれば、きっと……」

「正気に戻ると、良いですね」

「ぁあ!」

 俺の涙が入った小瓶を大事に抱えてオズさんは嬉しそうに笑って自室に戻った。この世界では魔法が存在していて、オズさんはとっても優秀な魔法使いらしい。攻撃魔法と防御魔法は勿論、治癒魔法も使えるとか。試せるものは全て試したらしいけど、何をしてもソウタさんは正気に戻らなかった。今度こそ正気に戻ってくれると良いのだが、俺なんかの涙で本当に効果があるのか疑問だ。

「……ハンバーグでも作るか」

 ボウルいっぱいに盛り上がった玉ねぎのみじん切りを見て、俺はハンバーグを作る事にした。冷蔵庫らしきものの中を漁って大量のひき肉を取り出す。異世界なのに言葉が通じて文字も読めるの、結構凄い事だよね。一体どう言う仕組みになっているんだか。

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あきゅろす。
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