くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
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メルヴィルと言う男の嫌味は結構長かった。あまりにも長過ぎて、途中から全く聞いていない。何となく分かったのは、彼は公爵家の三男と言う事。一番上の兄は第二王子の従者で、次男は神官の補佐をしているとか。アーノルドさんが居なければメルヴィルが騎士団長になっていたから、こうやって彼に会う度に絡んでいるとか。迷惑だなあ。
「目障りなオズワルドが居なくなったのは嬉しいが、まさかエヴァリーナ王女まで行方不明になるとは。本当に困った方だ」
「神子が亡くなった翌日に失踪ですからね。今頃仲良くあの世じゃないですか?」
「口を慎め。メルヴィル。オズワルド殿下も王族の血筋。第一王子であるオズワルド殿下に対して無礼であるぞ。エヴァリーナ王女に関してもだ」
「神子様が亡くなったなんてよく言えますね。アンタ達があの方を殺したくせに……」
アーノルドさんもレナードさんも物凄く怒ってて怖い。と言うか話の中に物騒なワード出て来なかった? 出て来たよね? 神子が亡くなったとか、殺したとか……
多分、その神子って人は俺と同じ異世界人だ。黒い髪に黒い目をしていたって言ってたから間違いない。次の神子を見付けて神殿で保護とか言ってるけど、絶対に嘘だと思う。だって、メルヴィルの顔が物凄く気持ち悪いんだもの。神子は皆平等に愛さなければならないとか何だよ。そう言って無理矢理襲ったんじゃねえの? そんな気がするわ。あの神子は便利だったとか、もっと楽しみたかったとか言ってるし。
神子に対して使う言葉じゃねーよな。完全に性奴隷とか性欲処理の道具にしか思ってなさそう。やっぱり腐ってるじゃん。此処で俺の存在バレたら神殿行きなるのかな? 絶対に嫌なんだけど!?
「そう言えば、先程神子がどうとか言って騒いでいたな? まさか、見付けたのか?」
「そう簡単に見付かる訳ないだろう?」
「見間違いですよ。俺の早とちりでした」
「ふん。使えない奴らめ。さっさと神子を見付けろ。神子を隠したらどうなるか、分かってるだろうな?」
「分かっている」
「隠す訳ないでしょ? 死罪にはなりたくないんで」
二人の話を聞いたメルヴィルはやっと満足したのか去って行った。彼の姿が見えなくなった後、二人は安堵したように息を吐いた。
「何とか誤摩化したが、バレるのは時間の問題だな」
「結構な人達に見られてますからね。これからどうしますか? 団長」
「オズワルド殿下とエヴァリーナ王女が居れば良かったんだがな」
「本当、何処に行ってしまわれたのでしょうね」
二人は自分の立場が悪くなると分かっていて俺を守ってくれたらしい。これからどうするのかとアーノルドさんを見上げると、安心させるように笑って「暫くは俺の屋敷で過ごしてくれ」と言われた。命の恩人を不幸にする訳にはいかないとも。
「あの方みたいに神子様の心が壊れる姿はもう見たくないです」
「オズワルド殿下の想い人でもあったと聞く。エヴァリーナ王女も神子様に心を救われたと仰っていたので、彼が亡くなって深く悲しんだに違いない」
「それで、後追い自殺をしてしまった、とか?」
直ぐに否定された。オズワルド殿下もエヴァリーナ王女も自ら命を絶つような愚行はしないとの事。うーむ。成る程。となると最悪の自体にはまだなっていないのかもしれない。とは言え、神子様が受けた仕打ちは地獄だし、同じ事をされたら俺は迷わず死を選ぶけどな。嫌だもん! 知らねえ中年オヤジの汚ねえナニを突っ込まれるのは! 上手く甘えろとか強請れとか奉仕しろとか、俺には絶対無理!
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