くっころ騎士団長様を救出せよ!《完結》
3
アーノルドさんが戻った事は直ぐに国中に広がって多くの人達から歓声の声が上がった。無事で良かったやら、帰りが遅いから心配したやら。沢山の人達から花束やら食べ物やらを貰ってアーノルドさんは少し困ったように笑った。小さな子ども達の頭を優しく撫でたり、顔を赤く染める女の子達に手を振ったり。人気者だなあ、と思う。
「アーノルド団長! よくぞご無事で……もう、戻って来ないと」
「心配をかけたな。レナード」
「本当ですよ! 団長が居なくなって、俺がどれだけ心配した事か! ぅう。団長ぉおおおおおお!」
レナードって男の人が泣き出すと、集まって来た他の騎士の人達も号泣した。やっぱり慕われてるんだね。アーノルドさんって。優しくていい人なんだろうな。オークにメス堕ち調教されかけてたけど……
「エイト。紹介する。彼はレナード・ボルコフ。副団長だ」
「初めまして。小鳥遊瑛都です」
レナードさんは赤茶色の短髪に少しタレ目の金色の瞳をした美形だ。筋肉ムキムキで物凄く、大きいです。なのに属性がワンコって。アーノルドさん限定で忠犬なのかもしれない。
「エイト? 団長、彼は一体……」
「俺の命の恩人であり、神子でもある」
「ちょ」
「神子様!? こんなちんちくりんが!?」
「誰がちんちくりんじゃゴラァア! 喧嘩なら買うぞ! このムキムキイケメン!」
「ムキ? イケ?」
「落ち着け。エイト。誰彼構わず喧嘩を売るな。レナードも初対面の相手に失礼な発言をするな。時と場合を考えろと何時も言っているだろう? 事実でも言っていい事と悪い事がある」
「申し訳ありません。団長」
「エイトもだ。分かったな?」
「……メス堕ち調教三秒前の人が言う台詞ではないですね」
「エイト?」
「ひぃ! ごめんなさい! 俺が悪かったです許してください!」
事実なのに! 事実を言っただけでこの殺気! 流石は騎士団長様。怖いよ! その顔怖いよ! とてもオークに犯されそうになっていた人とは思えない程の怖い顔! でもやっぱり美人だな。アーノルドさん。みんなから慕われる理由が分かった気がするわ。世の中所詮顔なんだろ! 畜生ぉおおおおおお!
「これはこれは。誰かと思えばアーノルドじゃないか。帰って来ないからもうくたばったのかと思ったぞ」
「見ての通り、俺は無事です。メルヴィル・アンブロジオ殿」
さらさら艶々の金色の髪に青い瞳をしたこれまた美形の男。メルヴィルと呼ばれた男は見るからに意地悪そうな奴だった。騎士の鎧を身に付けているので騎士なんだろうけど、物凄く嫌な感じ。取り巻きらしき男達が居るのも三流悪役っぽい。
「は! 孤児院出身如きが騎士団長など反吐が出る」
「アーノルド団長を騎士団長に任命したのはエヴァリーナ王女です。アーノルド団長に一度も勝てないからって、八つ当たりするのは違うんじゃないですか? メルヴィル様」
「それは此奴が卑怯な真似をしたからだ。不正をして団長の座を私から奪ったのだ」
卑怯者が、とメルヴィルはアーノルドに吐き捨てる。王道と言えばいいのか面倒と言えばいいのか。アーノルドさんにファミリーネームが無いのは彼が孤児だったからなのか。そこから騎士団長になるのに相当苦労した筈だし、努力だって人一倍して来た筈だ。けれど、悲しい事にどれだけ頑張って騎士団長に任命されようと、生まれが貴族じゃないだけで良く思わない人も居る。
なあんか、分かっちゃったかも。アーノルドさんがオークに襲われた理由。物凄く偉い人がオークと悪巧みしてアーノルドさんを罠に嵌めたんじゃないかなあ。そうじゃなかったら騎士団長であるアーノルドさんがオークに捕まるなんてヘマしないと思うし……
若しかして、この国の王族貴族って結構腐敗してる? 王女様がアーノルドさんを騎士団長に任命したって言ってたからその人は大丈夫だと思うけど。国王とか絡んでいそうで怖いな。孤児院出身だから王女様との結婚は認めないとか? あり得そうな理由だ。怖い。王族怖い。もっと平和にいこうよ。平和に。
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