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人を愛した魔族達《完結》
14
ルイスの第一印象は腹黒そう

次に琥之羽が思ったのは絶対に関わりたく無い

 今迄の経験上、こう言う人種は大抵が腹黒くえげつない性格をしている。生徒会副会長然り、魔導師然り……

 顔だけは綺麗なのに、何故彼等は此所迄性格が歪んでしまったのかと疑問には思うが、その理由を知りたいと思う程興味は無かった。これだけ端正な顔立ちをしているなら、神子が黙ってないだろうな、と場違いな事を琥之羽が考えている時だった。

 突然、目の前に影が差し、琥之羽は疑問に思い視線を上に向ける。

「貴方は私を見ても表情が変わらないのですね。驚きました」

 視線の先には淡い青い髪。次に視界が捕らえたのは青く澄み渡る瞳。ルイスが琥之羽に至近距離で顔を近付けていると琥之羽が理解して咄嗟に逃げようとした時、突然腕が腰に回され、もう片方の手で顎を掴まれクイッと上を向けさせられてしまった。

 至近距離で見るルイスの顔はやはり何処迄も整っていて、優しく微笑む姿も当然美麗なものだった。あぁ、この笑顔に皆騙されるのかと、琥之羽は表情を崩す事無く、客観的にそう思った。

「もし宜しければ、この城内を案内して頂けませんか?」

 ルイスが琥之羽にそう伝えた瞬間、周囲の人達は一斉に琥之羽を睨みつけるような視線を向けた。

「ルイス様、案内なら僕が……」

「こんな何を考えているかも分からない冴えない奴に頼まなくても……案内役なら他にも……」

「僕が案内しますよ?コイツと一緒にいてもつまらないだけですよ。表情1つ変えない気持ち悪い奴なんですから……」

 周囲の敵意の籠った言動や視線を浴びても、琥之羽は表情1つ変えない。自分が傷付いているのか、悲しいのか、辛いのか、そんな当たり前の感情の出し方すら、琥之羽は忘れてしまった。嬉しいと思う事も無ければ、悲しいと思う事も無い。

 琥之羽が感情を表に出すのは、大事な弟が関わる出来事だけ。それ以外で琥之羽は感情を一切表に出さない。元々、此所に居る人達からあまり好印象に思われてはいなかった。

 けれど、陰口を叩かれる位で、苛めに遭う事も無ければ、暴力を奮われる事も無い。多少面倒な雑用を押し付けられる事はあるが、前の世界で味わった苦痛を思えば、今の現状の方が余程恵まれた環境だと琥之羽は思っている。

「皆さん、有難う御座います。ですが、私は彼に案内して頂きたいんです」

 花が綻ぶような笑顔を周囲に向けると、皆が皆頬を染め、うっとりとした表情をルイスへ向ける。

 しかし、彼を至近距離で見ていた琥之羽だけは気付いていた。今向けている笑顔が、心からそう思って向けている笑顔では無いと言う事を。顔は笑っているものの、まるで親の敵でも見るような蔑んだ目を、ルイスがしている事を。

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