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記念ノ噺
07

久しぶりに見たアラン先生は、最後に見た時と変わらず、優しく甘やかな顔で微笑みかけた。
まるで、貴公子みたいだ。
あぁ、でも髪がかなり長くなったな。



「とおる君、成人おめでとう。」

「…え?」

「おや?自分の誕生日を忘れるほど、僕のことを考えていたのかな?」

「なっ!」

「ふふ。嬉しいよ。」

「っ!お、オレ、ずっと待ってたんだから!」

「うん」

「会いたくて、でも、もう学校は見えなくて…、センセから来てくれないと、会え、な…う、うぅ…」

「うん。ごめんね。」

「オレからは、会えな、く、て…さびし、かった…」



嗚咽を堪えながらそう言うと、伸びてきた手によって、今度は優しく抱きしめられる。



「僕も、会いたかったんだ。」

「うそ、だ…」

「うそじゃないよ。」



優しく頭を撫でられながら、センセの胸に顔を埋めて泣く。



「じゃ、なんで…ひっく、会いに来て、くれな…ったの?」

「…あのね、家族と約束したんだ。」

「ど、いう?」

「僕らの仲を認める代わりに、僕はとおる君が成人するまで会わない。」

「………」

「僕も、この3年間辛かったよ。」

「連絡とか、も、なかった。」

「だって、連絡なんかしたら、絶対にとおる君に会いに行っちゃうもの。」

「………」

「3年間、辛かったけど、一生側にいてもらえるなら、大したことじゃない。そう思ったんだ。ごめんね。」

「も、いい。」

「うん。傷つけちゃったね…。僕は、どうしたらいい?」

「…………て」

「え?」

「そばにいて。ずっと…」

「っ!もちろん。」

「へへ…センセ、大好きです。」

「僕も、愛してます。」



その後、二人でマリアさんの家まで帰った。
アラン先生はマリアさんにこってり説教されたが、結果的には祝福の言葉をもらえた。



「センセ、」

「おや、名前で呼んでくれて構わないんだよ?それに、もう先生じゃないしね。」

「何で?」

「とおる君に自由に会えないのに、あそこにいたくなくて辞めたんだよ。これからは、ずっと一緒。」

「っ!大好きっ!!」

「おっとっと…ふふ。一生大切にするからね。」

「オレも、アラン…のこと大切にする。」

「ありがとう。」



抱きしめあって、笑い合って、愛し合って…。
そうして、いろんなことに立ち向かうんだ。
きっと、世界はそう甘くないから。
でも、アランと一緒ならきっと大丈夫。
なんでも幸せに変えられる。
だから、どんな未来だろうと、二人一緒にずっとずっと…。



――――――――――――――



「アランよ、」
「何ですか、師匠。」
「お前、えらく古い魔法をかけたもんだね。」
「あぁ…あれですか。」
「魔法を交わした二人にしか解けない魔法なんてそうそうないよ。」
「唯一、人でも使える魔法ですからね。」
「まったく…。見事な魔法だよ。」
「永遠に解けませんよ、きっと。」
「だろうねぇ。」
「恋の魔法ですから。」



―――あの日かけたキスの魔法





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あきゅろす。
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