記念ノ噺
06
話を聞くと、おばあさんはアラン先生の魔法薬術の師匠だそうで…。
て、ことは…
「あの、マダムも魔女ですか?」
「そうさ。この地域の人に魔法薬を売って生活してる。まぁ、ただの医者兼薬屋扱いだけどね。」
それにしても、としげしげみられる。
「アランの選んだ子、ね。でも、アランを祝福することはできそうにないね。」
「え?」
「あんた、かけられてるよ。」
「何を、ですか?」
「魔法さ。とんでもないものをね。」
「どんな魔法ですか?」
「とても古い魔法だよ。そして、今もずっと続いている魔法。昔からあって、変わることはないものだね。」
「古い、魔法…」
「あぁ。」
「解くことはできるんですか?」
「できるさ。でも、私には無理だ。」
「え?」
「さ、話してる間に遅くなったね。ここに泊まりなさいな。楽しい話を聞かせてくれたお礼だよ。」
「あ、ありがとうございます。」
結局、どんな魔法なのかはわからずじまいだった。
その後、帰るまでの間置いてくれることになり、ついでに薬草園の手入れを手伝わせてもらった。
久しぶりに見る薬草の中には、特別な薬草も交じっていて、魔法学校の温室にしかなかったような植物もあった。
「ちょっと私は出かけるから、あんたもふらふらしといで。薬草園にばっかいたんじゃ、根っこが生えちまうよ。」
「はい。行ってらっしゃい。」
アラン先生の師匠こと、マリアさんを見送って、オレも散歩することにした。
マリアさんによれば、ここがセンセの故郷で間違いないらしい。
師弟時代の話もいろいろ聞かされた。
やはり昔から、センセはセンセだったみたい。
「センセ、来たよ。センセの故郷。」
綺麗な緑、突き抜けるように青い空、少し渇いた茶色い土。
ここでセンセも過ごしてたんだね。
立ち止り、景色を眺める。
「センセ、せんせぇ…会いたい。」
「えぇ。僕も…ずっと会いたかった…」
「!?」
背後から抱きすくめられた。
その声と、目の端に映る金髪、そして、相変わらずのふんわりとした柔らかな先生の香り。
「センセ、センセ、…アラン」
「とおる君…」
くるりと向き合い、キスをされる。
それからまた、抱きしめられた。
きつくきつく、その腕に。
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