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記念ノ噺
03

喉が渇く。
心臓がバクバクと早鐘を打つ。



「オレ、たぶんもうすぐいなくなる。退学、するんだ。だから、もう、最後だから伝えなきゃって思って…」



ゴクリと唾を飲む。

嫌われるかもしれない。
気持ち悪がられるかもしれない。
…仕方ないんだ。
それが普通の反応なんだから。
それでも、言わずにはいられないんだ。



「オレ、アラン先生のこと…」


―――好きです!!



やばい。
心臓がどっかに飛び出してしまいそう。
情けなく震える自分を感じたくなくて、ギュッと目を閉じた。
そのままのオレに、何の返答もないセンセ。
無言が怖くて、そろりと目を開ける。
そしたら、顔を赤くして口許を手で押さえたセンセがいた。



「センセ…?」

「っ!?あ、えっと…その、今の本当?」

「はい。」

「う…そ」

「う、うそなんかじゃ」

「…嬉しい」



そう言って、オレを抱きしめてきたセンセ。
耳元で何度も何度も、嬉しい、嬉しい、と言うセンセに、今度はオレが真っ赤になる番だった。
ぎゅうぎゅうと抱きしめられて苦しいはずなのに、オレも嬉しくていつの間にか抱き返していた。



「本当に嬉しい。夢みたいだよ。」

「夢なんかじゃないです。夢だったらオレ泣くよ?」

「そうだね。…あぁ、でもその話をしに来るってことは…」



そんな顔、してほしくない。
悲しそうな、苦しそうな、でも、何とか諦めようと無理して笑った笑顔なんて…。



「はい。もう、オレの魔力は0に近くて…。荷物も、もうまとめたし、実家にも連絡しました。…破門、だそうです。」



けれど、事実はちゃんと伝えなきゃ。
センセには嘘つきたくない。
真っ赤な嘘も、真っ白な嘘も。



「そっか。でも、破門はいくらなんでも厳しくないかな?僕が話してみようか?」

「いいんです。うち、みんな魔法使いで、オレより力持っててすごいんです。だけど、オレはそのせいで窮屈だから…。」

「…じゃあ、僕の秘密の場所をあげるよ。」

「え?」

「流石に、住む所もないなんて大変でしょう?そのくらいせめてやらせてほしいな。」

「いいんですか?」

「他でもない、とおる君のためだからね。」

「すみません。」

「何言ってるんだい。もう恋人なんだから遠慮はなしだよ。」



悪戯っぽくウインクしたセンセに、オレは泣いてしまった。
あんなに泣いたはずなのに、まだまだ涙が流れることにびっくりした。

優しいセンセ。
大好き、大好きです。

泣くオレを優しく抱きしめて、頭を撫でてくれるその手がとても温かく、ふわりと薬草の柔らかい匂いが香った。



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あきゅろす。
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