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記念ノ噺
02

遂に、浮遊魔法が使えなくなった。
羽根すら、浮遊させられない。

校長先生に呼ばれて、そこへ行くと難しい顔をしていた。



「乃木とおる君じゃな?」

「はい。」

「魔力が魔法を使えないまでに失われておる。もう1年もしないうちに君は、ただの人になるだろうの…。」



覚悟していたことだ。
その時が、目前に迫っただけ。



「君は、魔法薬術に長けた素晴らしい生徒じゃった。失うのがなんとも惜しい…。じゃが、魔力がなくなれば、魔法使いの資格は失われる。本当にもったいないことじゃ。」



惜しまれるほどの力なんてない。
魔法薬術だって、もっとすごいやつもいる。
だけど、校長先生は優しいから惜しんでくれる。
それが、すごく嬉しかった。



「…乃木君、魔力がなくなる前に荷物を整理しなされ。」

「はい、先生。今までありがとうございました。」

「うむ。話はそれだけじゃ…」



退学通達だった。
資格が失われれば、関わることすらできないから。



「乃木君、」

「はい?」

「…魔力が完全になくなるまでは、君はこの学校の生徒じゃ。やり残すことのないようにの。」

「はい。」


かけられた声に、嬉しくて泣いた。
まだ…まだ、オレはここの生徒だ。
できることをしよう。
やりたいことをしよう。
残された時間は少ないから。
悔やむことのないように。

そうしたら、自ずとやることははっきりしてきた。
荷物をまとめ、心配してくれた友達や先生に挨拶する。
それから、オレの足は自然とセンセのいる魔法薬草園に向かった。



「センセ、いる?」

「はい、ここに。」



アラン先生の優しい顔を見るとホッとする。
女の子たちがセンセを恋人にしたがるのもわかる。

センセは、すらりと背が高く、甘い顔立ちをしていて、長めの金髪を緩く結んでいる。
その容姿は、さながらどこかの貴族のようだ。
そして、何より優しい笑みと、柔らかな雰囲気に魅了されてしまう。

オレも、センセのそばにいて引き付けられた一人だ。
センセといる時間はとても穏やかだった。



「センセ、あの、オレ…」

「…はい」



言いにくい。
でも、言わなければ。
センセも、真摯に耳を傾けてくれてるんだから。



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