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記念ノ噺
01

その変化が顕れたのは、15の魔法演習の時だった。

元々、魔術は不得意で、得意なのは魔法薬術とか、魔法を使わないものだった。
人より少し、魔力がなかったのだ。
それでも中の上程度の魔法なら少しは使えた。
それが、演習でケイブドラゴンの鱗を採ろうとした時、姿隠しの魔法(中の上で最も簡単)が一人だけ使えず、ドラゴンの攻撃に遭って大怪我をした。

それから次第に、オレの魔力は衰え、17の現在、基本魔法ですらできない時が増えてきている。

様々な検査をした。
呪いではないかと、防衛術の先生から守護魔法をかけてもらった。
けれど、オレの魔力はどんどん減っているようだった。



「ねぇ、センセ。」

「なんだい?とおる君。」

「もし、魔力がなくなったら、オレはもうセンセに会えなくなるんだよね?」

「…とおる君、魔力がなくなるなんて考えてはいけないよ。」

「でも、検査の度に魔力が衰えてくんだ。オレ、馬鹿だけど自分のことだからわかるよ。」



遠くない未来、オレの魔力は0になる。
予言か何かみたいに、事実としてわかるんだ。

センセは…、アラン先生は、オレが大好きなセンセ。
センセとの繋がりは、単に魔法薬術の教師だったことから始まった。
大好きな授業で、もっと色々知りたくて、センセの部屋に押しかけて…。
いつの間にか、授業以上にセンセのことが好きになっていた。

…しかも、あろうことか色恋沙汰の意味で。

魔法学校での居場所は、もうかなり少ない。
魔術が使えなくなっていくオレは、クラスメートから異質な存在として扱われ、レベルについていけないから疎外されていく。
先生達からも、扱いにくい生徒として腫れ物を触るように接してきて息が詰まる。
オレに残された場所は、センセのいる部屋と魔法薬術の教室、魔法薬草の温室と魔法生物飼育室くらいだ。
けど、いずれそれらも失うのだろう。

オレの魔力が完全に尽きた時、オレの目には魔法学園が映らなくなる。
感じることができなくなる。
魔法なんて非科学的なもの…なんていう世界にしか生きられなくなるのだ。
魔法はある。
でも、もう二度と使えなくなる。
学園が見えなくなるのはまだいい。
まだいいが、魔法生物を見ることもできなくなるのだ。
また、センセが、魔法学園の先生である限り、オレにはセンセと会うことも、見ることもできない。
気が狂わないか心配だ。



「センセ、」

「ん?」

「センセの故郷ってどんな所?」

「そうだね…しばらく帰ってないから今、どんな感じかはわからないけど、一面の葡萄畑でね。のんびりした田舎だよ。」

「ふ〜ん…。行ってみたいな。センセの故郷…」



話を変えたくて、そんな会話を繰り返す。

魔力がなくなって、センセに会えなくなったら、少しでもセンセの姿を探して故郷を訪ねるんだ。
そこで、葡萄を育てるのもいいなぁ。
葡萄でセンセが好きなワインを作るのもありだよね。

そうやって思いを馳せ、現実の苦しみから目を反らす。



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あきゅろす。
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