記念ノ噺
4
〜僕の秘密5の続き〜
襖の向こう側にいるであろう父と母。
緊張する。
…するけど、入らなきゃ。
「入ります。」
「おう。」
答えた父の声に襖を開け、中へ入ると晩酌をしている仲睦まじいつも通りの父と母…と、えぇ!?
「何で兄さんまでいんの!?」
「やぁ、ゆい。お帰り。早く入りなよ。」
「いや、僕が会わせたい面子に兄さん入ってなかったんだけど!?」
「まぁ、いいじゃないの。お帰り、結十。」
兎に角中へ入って、父と母、ついでに兄の前に座った。
「元気そうで何よりだ、結十。」
「うん、父さんたちも相変わらずだね。」
「そりゃな。そんで、話ってなんだ?」
「あのね、紹介したい人がいるんだ。」
ずっと黙ってた詩眞さんを見ると、すごく凛とした顔をしていた。
いつにも増してカッコイイ…。
「初めまして。オレは結十の恋人の、沖田詩眞と申します。」
「ほぉ…兄ちゃんがね。結十、」
「はい。」
「良かったな。」
「…え?」
なんて言われるか怖くて俯いていた顔を上げると、父は父の顔をして優しく微笑んでいた。
「お前が、一番知られるのが怖かった家のことを紹介するくらい好いてる野郎を見つけられたんだろ。俺ぁ、お前がそう言う奴を見つけられただけで、嬉しくて仕方ねぇよ。なぁ、久子?」
「そうね。詩眞さん、結十はね、この家が『極道』ってだけで辛い思いをしてきたのよ。小さい頃なんか、友達を家に連れてくることもできなかった。本当に良かったわ…。」
「あ、ありがと…。」
「ってことは、完全に家と縁を絶つってのか!?許さんぞ、兄ちゃんは許さないぞ!」
で、出た。
「オレを置いていくなんて、兄ちゃんは許さないぞ!」
「いや、別に絶縁するわけじゃ…」
「よし、こうなったら決闘を申し込む!」
「はぁ!?」
「おい、てめぇ…ゆいが欲しければオレを超えてみせろやぁ!」
「いいですよ。そのかわり、オレが勝ったらオレたちの関係、認めてくださいよ?」
「いいだろう。」
だ、だから嫌だったんだよ〜!!
ブラコンの兄さんがいると、めんどくさいことになるから。
父さんも母さんも、面白そう、とか言ってないでやめさせてよ…。
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