記念ノ噺
2
〜僕の秘密5の続き〜
煩いながらも平和だ。
いつの間にか転校生騒ぎもなくなって、平和そのものだ。
普通に授業受けて、お昼では食堂で騒がれるけどそれにも慣れた。
あしらい方を知ったみたいな?
それから、パンク状態からも抜け出してきた。
これは諦めの境地と、詩眞さんのお陰だ。
「ゆいちゃん、最近前と同じ感じに戻ってきたね。」
「そうですか?」
「うん。落ち着いてきた。」
今、オレは自分の店で新しいアクセのデザインをしている。
今回は会計サマの実家、兵頭クオーツという小さいが希少な宝石を扱う宝石店とコラボしているため、特別に…『特別』に、会計もデザインを一緒に手掛けているのだ。
「前は、よゆーそうに見えて、いっぱいいっぱい!って感じしてたけど、最近はそうでもないよねぇ。」
「それはあなたたちのせいでしょう?」
「え〜。」
「あ、そのデザイン採用。」
「え、ほんとぉ!やったぁ!」
余裕、ね。
たしかになかったかな。
今は、こうして色々考える時間がある。
デザインのこと、店のこと、学校のこと、チームのこと。
それから、一番はやっぱり…詩眞さんのこと。
「…もし」
「え?」
「もし、ですよ?自分の中に一番の秘密があったら、あなたならどうします?」
「ん〜…。秘密ってさ、いつかはばれるものだと思うんだよね。それに、知ってほしい人には自然と口からつたえるんじゃないかなぁ?オレは、自分の口が滑るのを待つけどぉ…。」
「…なるほど。」
「なになにぃ〜?まぁだ隠し事あるのぉ?」
「秘密です。」
「えー。」
どうにか聞き出そうとする会計を黙らせ、再びデザインに戻る。
出来たデザインを抱え、後は作るだけなので、試作品に取り掛かった。
静かな一人だけの作業部屋。
自分の世界に浸り、考え事には持ってこいの場所だ。
「…そろそろ、決めるべきなのかも。」
ぽつりと呟いた声は、思いの外大きく、けれど誰にも聞かれる事なく消えていった。
定まってきた心を固めながら、店を後にした。
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