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記念ノ噺
兎と月と…2



結果を言えば、逃げきれなかった。
やっぱりというか、何というか…。



「お〜ろ〜せ〜!」

「ダァメ。それに今降りたら、いくら兎でも死んじゃうよ?」

「うっ!」

「そう。大人しくね。」



人間は、人間じゃなく、月の神様だった。
そして、オレは月にお持ち帰りされたのだった。



「神様コノヤロォォオッ!!」

「ゴフッ!!」



月の御殿だか何だかに到着すると、その声と共に神様(仮)が何者かによって飛び蹴りされ、吹っ飛んでいった。

良かった、降ろしてもらった後で…マジ良かった。



「おぃ、神様ぁ?なぁにこんのクソ忙しい時にぶらぶら散歩行ってんだぁ?あ゛ぁん!?」

「ご、ごめ、オブゥッ!」



か、踵落とし…。
しかも、ぐりぐりしてる。
踏んだままぐりぐりしてる。

こ、コワ…。



「こちとらなぁ、睡眠不足なうえの労働なわけよ。オワカリ?」

「は、はい。」

「ほぉ…って、わかってねぇからぶらぶらしてんだろうが!何だてめぇは?ぶらぶら揺れるブランコかぁ?」

「す、すみません。」

「すみません、で済んだら今までの灸はいらねぇんだよ!」

「あ、あのね!後ろ、後ろ!」

「あ゛ぁ?って、うぇぇえ!?」



オレの方に振り返った、めちゃくちゃ怖いそいつは、めちゃくちゃ美形なうえ、何故か頭に兎の耳を生やしていた。
そして、オレを見た瞬間、神様の胸倉を掴んでいた手を離してびっくりしていた。



「は、嘘!?マジ?え、ちょ…お前、ウサギ小屋の白兎だよな?」

「は、はい。」



あのウサギ小屋に白兎はオレだけだった。

そう言った瞬間、美形に抱き着かれた。

っていつの間にオレは人間になってたんだ!?



「ヤベー…嬉しい。あ、オレは月ウサギ。その、オレお前が好きで、さ…」

「あ、あの…」

「友達からでもいいんだ。だけど、その、番になるの前提に…ダメか?」



ちらりと神様を見ると、失神していた。
頼れるものがいなくなった今、オレはどうしたらいいんだ?



「…じゃあ、友達からよろしくお願いし」



チュ…



「………マウス。」

「絶対に惚れさせてやんよ。」



ニィッと笑う月ウサギに、オレは『あ、勝ち目ない。』と悟った。



――――――――――――――



兎と月と恋の道



(オトされるまで、あと僅か)



             End



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