無色ノ噺
オレと可愛い異母弟
オレと本家に帰った壱魅を、自室へ行かせると、バカ親父にある作戦を伝えにいった。
「バカ親父〜。」
「なんだ、バカ息子。」
「てめぇほど馬鹿じゃねぇよ。あのな、壱魅連れて来たんだけど、」
「おま、誘拐したのか!?」
「違ぇよクソ親父。オレの壱魅が恋してるらしい。」
「何だと!?どこのどいつだ!」
「壱魅の執事。」
「ノォォォオ!」
「うっせぇよ、クソバカ親父。で、あの執着心の塊みてぇな執事も、きっと壱魅のこと好きだから、両想いにさせてやろうかと…」
「まぁ、いいんでない?」
「若干、オレらの命が危ねぇかもだけど、そんときゃ、楯にすっから。じゃ。」
背後で誰を!?と叫ぶ親父を置き去りにして、壱魅の元へ戻ると宿題を片しながら、メイドと和んでいた。
「でね…、あ、ふみちゃんお帰り。」
「あぁ。何話してたんだ?」
「史人様のお話ですよ。もう、壱魅様ったら可愛らしいんですから!」
そう言って、メイドは下がっていった。
壱魅信者がまた増えた…。
その後、アメリカでの留学中の話や、壱魅の生活の話をした。
そして、作戦を開始する。
「壱魅、テレビでも見るか?」
「うん!」
そこで見せたのは、動物のドキュメンタリー。
感動する壱魅が、泣き出した所で、親父に電話をかけさせ、オレがわざと壱魅の泣き声が入るようにして、執事がキレる言葉を発し、一方的に通話をきった。
やべぇ…、受話器越しからでも伝わるどす黒い殺気が怖ぇ…。
オレ生きてられっかな?
「う、ぐすっ…ふみちゃん?」
「あ、あぁ…壱魅、もう少ししたら秋江さん迎えに来るってさ。」
「…ん、ありがとう。つか、やばい、まだ泣ける。ラブちゃんホント…う、うぅ…」
「あ〜もう。ほらティッシュ。鼻かめ。」
動物系に弱い壱魅が、泣く姿は本当に可愛くて、一瞬にして、自分に迫っている危機を吹き飛ばしてしまった。
最初、ホラーを見せようかと思ったが、壱魅がホラーが平気ということを知っていたので却下した。
オレだったら、泣き叫ぶ自信大有りだぞ。
リ〇グとか…。
つか、オレが泣いても意味ないだろ。
それから数分後、玄関が荒々しく開く音が聞こえた。
さて、楯にするバカ親父でも連れて来よう。
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