無色ノ噺
2
海那に連れられ、店に入るとホストたちからの視線がオレに降り注いだ。
「はい、注も〜く!みんなも気になってた、噂のあの人連れてきたよぉ。」
「「「「マジッすか!」」」」
「噂って何…?」
しかも、ワンコ君と同じく、みんなオレを見て感動してる。
「おぃ、てめぇ…何の噂流しやがった?」
「ひ・み・つ!さ、今日は悠志さんのために張り切ってやらなきゃなぁ!…悠志さん、」
「あ?」
「惚れそうになったら言ってねぇ?」
―――即行で攫いにいくから。
「なっ!?」
「ふふ…じゃ、ごゆっくりぃ。」
ヤバ…絶対ぇ顔赤い。
――――――――――――――
これはどういうことだ?
一人でカウンター席の隅に座り、海那を見たり、ホストと話したりしていたら…
「指名していいかしら?」
「いや、オレはただの客なんで…。」
「あら、そうなの?まぁ、固いことはなしよ。お話しましょう?」
さっきから何人目かの、お誘いに強引に連れていかれ、様々な話をしている。
ホスト押し退けて、ホストしてるっておかしくね?
「少し失礼しまぁす。」
「カイ!」
「代わりの者を付けますので、しばらくお待ちくださぁい。」
海那に腕を引っ張られ、店の奥へ行くと、ストライプが入った黒いスーツと、ワインレッドのカッターシャツを渡された。
「お、おい!?」
「悠志さん、それ着てぇ?」
「はぁ?」
「ホスト体験、してみない?」
「ホスト、体験?」
「うん。さっきから、女性に指名されてるしぃ、たまには違う世界見るのも面白いかもよぉ?」
「………迷惑、なんねぇ?」
「ならないよぉ。…まぁ、単に一緒にいたいからなんだけど。」
「?」
最後、声が小さくて聞こえなかったから、小首を傾げる。
「なんでもなぁい。ほら、早く着て!お客さんが待ってるからぁ。」
オレは、まぁいっかな…、と渡された服を着て、少し髪を整えてもらってから、スタッフルールを出た。
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