無色ノ噺 初体験 明日は日曜日。 たまたま土曜出勤もなく、海那との約束を果たすことにした。 「けど、ホストクラブって何着てきゃいいんだ?」 スーツ、はないな。 普通でいいか? 適当に着て、なんか味気なかったからアクセもつけてみた。 まぁ、これくらいなら浮かねぇか。 姿見で確認し、今から行くことをメールで伝え、家を出発した。 ―――――――――――――― やはり、というか何と言うか、海那の店、『セイレーン』がある場所は、他より静かとはいえ、同じような店が並び、まだ新人であろうホストが客を呼び込んでいる。 …完璧、浮いてるわ。 道行く人は女性ばかり。 野郎なんざオレくらいだ。 「あ、海那…。」 セイレーンの前で女性と話していたが、オレに気づくと女性から離れてこっちに来た。 「お迎えに上がりましたぁ、お姫様。」 「誰が姫だ、アホ。」 「雰囲気、雰囲気ぃ。待ってたよぉ、悠志さん。」 柔らかに笑うそいつに、赤面してしまいそうになるほど、ドキリとさせられた。 「悠志さんの私服って、新鮮だなぁ…。」 「そうかぁ?」 「だって、いつも家帰るとスウェットだしぃ。」 「そういやそうか。つか、オレもお前の私服見たことねぇぞ。」 「じゃあ、今度どっか行こうよぉ。デートみたいにぃ!」 「…男同士でデートはきめぇ。」 他愛もない会話をしながら、セイレーンに着くと、顔のイイ兄さん方が迎えに来た。 「オーナー!どこほっつき…って、あの、そちらは?」 金パが目に痛てぇワイルド君が、オレを見て急にワンコ君になった。 「ん〜?風間悠志さん。オレの、ねぇ。」 「!この人が…」 ………なんかやたら、感動してるんだけど? 「おい、海那」 「あ、ここではカイって呼んでぇ。規則だからさぁ。」 「…カイ、これはどういうことだ?」 「ふふ、ひみつ〜。」 何か吹き込みやがったな…。 [*前へ][次へ#] [戻る] |