無色ノ噺 合コン 行きたい奴らに混ざって、酒をそれとなく飲んで、女性陣とも喋って…あぁ、なんて…… 「くだんねぇ…。」 一人で、トイレに行く、と言い今回の合コンの店の路地裏で、タバコをふかした。 ぽつりと呟いた本音は誰かに拾われることもなく、空気にとけていった。 そこそこの大学に入って、気まぐれで受けた会社(かなりでかい)に入社して…。 平社員の社会人2年目のオレは退屈を持て余していた。 大してかっこよくも、綺麗でもない顔は、可もなく、不可もなくといった感じだが、会社の美人なお姉様方からも、綺麗な同僚からも、可愛い妹?様方からも、お声がかかる。 たまに、何かの手違いで、カッコイイ先輩方や、美形な同僚、生意気だけど微笑ましい後輩方から声がかかることも…。 頭のネジが10本くらい抜けてたんだろうな。 だから、絶対に合コンの席に呼ばれるのだ。 「お兄さん、どしたの?」 「…何で、てめぇがいんだよ。」 声をかけられ、顔を向ければ派手な顔だが極上の王子ホスト。 ちなみにマンションの隣の部屋だ。 「ん〜?何かお得意さんが、出張サービスしてほしいって言うから、相手してたんだぁ。」 「あぁ…、だから臭うのか。」 「臭うって、失礼な。むさい汗の臭いよりマシでしょお?」 「多少な。だが、生憎オレはそういう臭いも嫌いなんでね。」 「どうしてぇ?」 「秘密だ。」 フゥ…と吸った煙をホスト、香月海那に吐きかける。 そうして、誤魔化すんだ。 これは、悟られてはいけない気持ち。 知られてはいけないある種の思い。 だって… ―――お前が好きだから…。 だから他のやつの臭いや、香水の匂いがお前からするのは嫌なんだ。 いっそ、そう言えたら良かったのに…。 「…あぁ、分別があるって、マジめんどくせぇ。」 「ふふ…。なんだかよくわかんないけど、オレ、もう行くね。」 「あぁ。頑張れよ、カイ。」 「…うん。じゃ、またね。ゆうちゃん。」 海那の遠ざかる背中を見送り、オレも店に戻った。 体に残った海那からの移り香が気持ち悪かった。 合コンの席に戻り、てきとうに酒を飲みながら、海那を思った。 そんな風間悠志、24の春だった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |