[携帯モード] [URL送信]

音楽ノ噺




「ただいま〜。」

「お帰り。」



家に帰ると、希紫ニィが出かける準備をしていた。



「今日、仕事?」

「今日、仕事。あ〜あ、折角リィが帰ってきたのに、ゆっくりもしてらんないのか…」

「いいじゃん、帰ってくんだからさ。頑張ってね?」

「あぁ…。じゃ、頑張ったらご褒美ちょうだい?」

「変なのじゃなきゃな。」

「ちっ…言ってきます。」

「いってらっさい。」



希紫ニィを見送ると、オレは早速練習し始めた。

高い音に、低い音、聴かせる部分と、盛り上げる部分、それからシャウトと、囁き。
バリエーションは、広く、音楽変化にどんどん吸い込まれる。



「うぁ〜…、流石『No Name』。センスいいな。」



ここまできてなんだけど、未だ本当に自分が『No Name』のメンバーになったことが信じられない。



「頑張らなきゃな。」



漆祈はもちろん、メンバーのみんながオレを信頼してる。
オレはそれに応えたい。
応えて、同じ場に立つことを、他の人にも認めてもらいたい。



「よし!頑張るぞ!」



意気込んだオレは、アイラさん時代のは完璧覚え、残る2曲に取り組んだ。



――――――――――――――



〜漆祈Side〜

あの後別れたオレたちだが、実はオレのマンションに集まっている。



「漆祈は意地悪だな〜。」

「オレはまだ、本当にあいつを認めたわけじゃない。」

「漆祈、せめて希莉クンて呼びなよ。いくらいないからって、僕はやだよ。」

「悪い。」



オレは希莉をまだ認められていない。
たしかに、歌唱力はアイラとは雲泥の差で、凄かったと思う。
だけどそれだけ。
どう凄いのかがはっきりしてこない。
あとは容姿だ。
仮にもビジュアル系として、デビューするのにあの凡庸な顔では納得しないファンも出てくるだろう。



「…ぐだぐだ言ってんじゃねぇよ。」



ガッとローテーブルを蹴る楽。
笑っちゃいるが、若干キレている。



「漆祈よぉ…、キーリの上辺だけで言ってんなら」



―――殺すぜ?



笑みがスッと消え、冷たい目で射抜かれる。

その後すぐ、ルトが集会を強制的に解散させた。

楽は、人を信頼しない。
人に関心を向けない。
あいつの中に誰も入れないから…。
だけど、希莉はいともたやすく入ってしまった。

どういうことだ?

オレはもやもやしたまま、誰もいなくなったソファに寝転んだ。



[*前へ][次へ#]

9/13ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!