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音楽ノ噺


オーディションにめでたく合格してから二日後、漆祈さんから集合がかかった。



「えっと…グストにいるって…あ、」



ファミレスのグストに行くと、女の人の視線が集まる席に気づき、ついでにそこに目当ての人たちがいるのに気づいた。



「あ、ヤッホー!こっちこっち!」

「…キルさん。」



苦笑しながらそこへ行くと、好奇の目と、訝しむ目、あからさまに邪魔だ、という目に晒された。
それに気づいた楽さんが、オレを奥へ引きずり込む。



「揃ったな。」

「イェーイ!!パフパフ!」



漆祈さんの言葉で、キルさんが何故かハイテンションになる。



「うるさいよ、キル。他のお客さんに迷惑でしょ?」

「あ、ゴメン。」



ルトさんってお母さんみたい。



「さて、今日はお前の名前決めと、明後日の『箱』でのミニライブについてだ。」

「名前?」



名前なんてテキトーに付ければいいのに…。



「うちではさ、本名より芸名?で呼び合うんだ。希莉クンは、僕らのバンドに一昨日誕生した新しい家族みたいなもの。単にバンドだから繋がってると思いたくないんだよ。」

「へぇ…。何か案外アットホームなバンドなんですね。」



『家族』と言われて、心があったかくなった。



「だから、敬語もなし!『キルさん』じゃなくて、キルって呼べよ?」

「はい!」



嬉しい、嬉しい!

思わずへにゃりと笑うと、思いっきり楽さ…じゃない、楽に抱きしめられた。



「…名前、キーリはどう。」

「『希莉』だから、真ん中伸ばしたのか…。」

「それ、いいんじゃない!」

「キルと兄弟みたいだね。希莉クンはどう?」



…案外、安直なんだね。
でも、まぁ…



「ゴテゴテしたのよりはマシか…。じゃあ、キーリで。」

「よっしゃ!誕生してくれてありがとな、キーリ!」

「どう致しまして…?」



今、この瞬間、オレは本当に『No Name』の一員になれた気がした。

抱き着こうとしたキルが、楽に低い声で、抱きつくんじゃねぇよ、と言ったのをみんなで苦笑した。

あ、キルだけは、すんませんでしたぁ!と青くなってたけど。



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あきゅろす。
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