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音楽ノ噺


歌い終わると、静寂が空気を支配した。
歌に熱中していたオレが、メンバーに目を戻すと、漆祈さんの持っていたペンが折れ、キルさんは唖然とし、綺麗系のルトさんは目を見張り、寝ていた可愛カッコイイ系の楽さんは、ニコニコ笑っていた。

ナニゴト!?



「あ、あの…?」

「桜井希莉、だったな。」

「はい。」



かたりとペンを置いて、漆祈さんが目を閉じ、椅子にもたれると息を吐いた。
そして、決めたかのように目を開いて、オレを見据えた。



「…いい声だ。啼かせたくなるな。…合格だ。」

「はい…。はい?」



普通に返事したけど、なんか凄いこと言われた気が…。



「合格。うちの歌姫として、活躍してほしい。」

「い、いいんですか?」

「構わないよ!寧ろ、その声に合わせて弾きたい!」



キルさんがガタンッと立ち上がって言った。
嬉しいような、恥ずかしいような気がして思わず、へにゃりと笑うと、急に楽さんが、席を立って近づいてきた。



「ら、楽さん?」

「…イイ声で啼けよ。」

「ひゃあっ!」



抱きしめられたと思ったら、意外と低く甘い声で耳に囁かれた。

息が当たり、思わず変な声を出してしまうと、離れた楽さんはニコニコと可愛いらしく笑っていた。



「楽、戻れ。悪いな。そいつ、ニコニコ笑ってっけど、思ってること必ずしも一致してるわけじゃないんだ。」

「え?」

「つ〜ま〜り〜、こういうこと!」



そう言ってキルさんが、楽クンのブログ朗読始まるよ!と携帯を取り出した瞬間…



「…沈めんぞ。」



ものっそい低い声で、超ニコニコした顔のまま楽さんは、言い放った。



「じ、冗談だって〜。」



…なるほど。
顔と言葉が一致してない。



「ちなみに、前、一度本気でやって、携帯逆パカされたんだよ。」

「逆パカ!?」

「あぁ。笑顔のまんまでな。」



ルトさんが付けたし、漆祈さんが当時を思い出すような顔で言った。

楽さん恐るべし…。

その後、楽さんに気に入られたらしいオレは、オーディションの最後の一人が終わるまで、ずっと引っ付かれていた。

案の定、『あの平凡なに?』という目がグサグサ刺さった。



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あきゅろす。
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