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音楽ノ噺


オーディション会場には、カッコイイ人ばっかり。

やべぇ…早くも泣きそう。

明らかに、こっち見る目が『何あの平凡。』って言ってるし。



「そこの平凡、邪魔。」

「ぐぇっ!」



綺麗な人に突き飛ばされ、笑われた。

…希紫ニィ、今なら取り返しのつかない世界行っても、誰も止めねぇよ。

その時、待合室に放送が入った。



『ただいまから、ボーカルオーディションを行います。呼ばれた順に、案内に従いオーディションルームへ来て下さい。また、オーディション結果はその場で出しますので、荷物は全て持ってから来て下さい。』



バンドリーダーの漆祈さんの放送に色めき立つ人は、きっと漆祈さんのファンだ。

みんな、かっこよかったり、可愛いかったり、綺麗だったり…。

平凡はオレくらい、か…。
…フフフ。

一人呼ばれ、二人呼ばれ、人が減っていく。
結果は直接本人に言うらしいから、もう、決まってしまっているかもしれないし、まだかもしれない。



「151番の方どうぞ。」

「あ、はい。」



次、オレか…。
今の人も可愛かったな。
態度最悪だけど…。

ドキドキしてきた。
その時、


「152番の方どうぞ。」

「はい。」



…呼ばれんの早くね?
そりゃ、170人もいるから、ばっさばっさ切り捨てていかないといけないけどさ。



「こちらです。」

「ありがとうございます。」



ドアの前に立ち、深呼吸をしてから、オレのオーディションを始めた。

歌うだけでいい。
ただ、歌いたいだけだから。

歌い、叫び、響かせ…。

それだけをしたい。



「確認する。名前とプレート番号を言って。」

「はい。152番、桜井希莉です。」

「えっ!?もしかして、桜井希紫の弟君?」

「え?あ、はい。」



チャラ男系で、ギターのキルさんは、希紫ニィのこと知ってるんだろうな。



「…まぁ、実力がなければ、それまで。ナイトの弟のお手並み拝見といこうか?」



鋭く、冷たい漆祈さんの目は、真剣そのもので、オレも、オレの全てをかけて歌おうと改めて思った。



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あきゅろす。
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