音楽ノ噺
2
オーディション会場には、カッコイイ人ばっかり。
やべぇ…早くも泣きそう。
明らかに、こっち見る目が『何あの平凡。』って言ってるし。
「そこの平凡、邪魔。」
「ぐぇっ!」
綺麗な人に突き飛ばされ、笑われた。
…希紫ニィ、今なら取り返しのつかない世界行っても、誰も止めねぇよ。
その時、待合室に放送が入った。
『ただいまから、ボーカルオーディションを行います。呼ばれた順に、案内に従いオーディションルームへ来て下さい。また、オーディション結果はその場で出しますので、荷物は全て持ってから来て下さい。』
バンドリーダーの漆祈さんの放送に色めき立つ人は、きっと漆祈さんのファンだ。
みんな、かっこよかったり、可愛いかったり、綺麗だったり…。
平凡はオレくらい、か…。
…フフフ。
一人呼ばれ、二人呼ばれ、人が減っていく。
結果は直接本人に言うらしいから、もう、決まってしまっているかもしれないし、まだかもしれない。
「151番の方どうぞ。」
「あ、はい。」
次、オレか…。
今の人も可愛かったな。
態度最悪だけど…。
ドキドキしてきた。
その時、
「152番の方どうぞ。」
「はい。」
…呼ばれんの早くね?
そりゃ、170人もいるから、ばっさばっさ切り捨てていかないといけないけどさ。
「こちらです。」
「ありがとうございます。」
ドアの前に立ち、深呼吸をしてから、オレのオーディションを始めた。
歌うだけでいい。
ただ、歌いたいだけだから。
歌い、叫び、響かせ…。
それだけをしたい。
「確認する。名前とプレート番号を言って。」
「はい。152番、桜井希莉です。」
「えっ!?もしかして、桜井希紫の弟君?」
「え?あ、はい。」
チャラ男系で、ギターのキルさんは、希紫ニィのこと知ってるんだろうな。
「…まぁ、実力がなければ、それまで。ナイトの弟のお手並み拝見といこうか?」
鋭く、冷たい漆祈さんの目は、真剣そのもので、オレも、オレの全てをかけて歌おうと改めて思った。
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