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音楽ノ噺


ライブ当日。
オレはメイクさんにほっとかれていた。
何度も声かけてるにもかかわらず。

そりゃ、こんな平凡じゃマネージャーと間違われるか…。
基礎化粧はしたんだけどな。



「キーリ?もうすぐなんだが。」

「あ、えっと…すみません。」

「何で謝る。仕方ない…俺がやるからこっち来い。」



腕を引っ張られ、ドレッサーの前に座らせられる。



「あ、あら、漆祈さん?彼は…」

「メイク道具借りるぞ。」

「え?」



美人なメイクさんの物らしいコスメを使って、化粧を施されていく。
若干、肌が息苦しいのが嫌だが、文句は言えない。



「…ボディペイント入れてもいいか?」

「あ、どうぞ。」



うん、平凡を少しでも引き立てるならもうどうにでもしてく



「ひゃっ!」

「おっと…。くすぐったいか?」

「ごめん。いきなり首にくるとは…」

「弱いのか?」

「まぁ。基本擽りには弱い。」



それで何度、笑い死にそうになったことか。

終わるまで辛抱し、ドレッサーの鏡を見ると、綺麗な蝶が首に描かれた別人がいた。
自分だと気づくまで、10秒を要した。



「漆祈〜、キーリ知らな…って誰ぇぇぇえ!?」

「…キーリです。」

「どうしたの、キ、ル…誰?」

「……キーリです。」

「…クク、やるじゃねぇか漆祈。」



楽だけは、最初からオレに気づいてくれた。
思わず抱き着いてしまう。



「おっと…何だぁ?甘えただなぁ。」

「楽だけだよ、ちゃんと気づいたの〜!」

「そりゃ平凡のへの字もねぇからな。」

「…それはオレも思った。」



ルトもキルも固まっているが、それも仕方ないかもしれない。
オレもオレに10秒くらい気づかなかったし。



「…メイクは、これから俺がやってやる。」

「漆祈が?」

「嫌か?」

「いや!寧ろお願いします!」

「了解。」



それからちょいちょいと、髪の毛をいじられ、メイクは終わった。



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あきゅろす。
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