音楽ノ噺
5
「やるか。」
「おっしゃあ!」
「うん。」
「はい!」
「………。」
上から、漆祈、キル、ルト、オレ、楽ね。
楽はいつも通り、ニコニコしている。
やば…癒される。
「まずは、とりあえず通すか。」
そう言って、カンカンカンカンとクラッシュ・シンバルを叩くと一曲目の前奏が始まった。
オープニングは賑やかな激しい曲。
前に進むことを恐れるな、っていうメッセージの篭った歌詞が何度オレを励ましてくれたことか…!
2曲目は、ちょっと病んでるっぽい感じの、カッコイイ曲。
実は十八番だったりする。
3曲目は、バラード。
声質的には一番あってると思う。
歌いやすいし。
だからこそ、絶対気は抜かないけど。
4曲目は、打って変わってデスヴォ満載の悪魔題材の曲。
まさにV系の真髄みたいな。
5曲目は、綺麗なラブソング。
ロミ・ジュリっぽい内容で、音につられて思わず泣きそうになった。
…何回も。
「「「「「………。」」」」」
終わった後の余韻、っていうの?
みんなで沈黙する。
それから、そっと各々の楽器から手を離し、息を吐いた。
「やべぇ…。マジ興奮する。」
「…なんか、初めて演奏するのが気持ちよかったかも。」
「あぁ…」
「………。」
オレも、楽器の自分から離れるべく、閉じていた目を開けると、何故かみんな恍惚とした表情を浮かべていた。
「ど、どしたの?」
オレ、なんかやらかした?
まさか、やっぱ相応しくないからって…。
不安になって、ニコニコ笑う楽を見ると、
「…だから言ったろぉ?なぁ、漆祈ぃ?」
………若干、空気が黒いのは気のせいだろうか?
気のせいにしていいだろうか?
「悪かった、楽。キーリ、」
「はいぃ!」
「すまなかった。」
「は?」
「正直、認めてなかったんだよお前のこと。だが、合わせてわかった。」
え…認めて、もらえてなかったの?
「キーリ、」
「…はい。」
「俺たちにはお前が必要だ。その声が欲しい。『No Name』のキーリになってくれ。」
頭が真っ白。
舞台で輝いてた彼らが、オレを必要だと言ってくれる。
嬉しくて、嬉しくて…。
そしたら、涙が出てきた。
「へ、平凡、だけっ、ど…がん、頑張る、かっ、ら…よろ、しっお願い、しま…うぅ、」
その後、楽に抱きしめられ、キルに慰められ、ルトがハンカチを貸してくれ、漆祈が楽に何か言われて苦笑していた。
なにはともあれ、ちゃんと認められたようです。
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