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音楽ノ噺




「やるか。」

「おっしゃあ!」

「うん。」

「はい!」

「………。」



上から、漆祈、キル、ルト、オレ、楽ね。
楽はいつも通り、ニコニコしている。

やば…癒される。



「まずは、とりあえず通すか。」



そう言って、カンカンカンカンとクラッシュ・シンバルを叩くと一曲目の前奏が始まった。

オープニングは賑やかな激しい曲。

前に進むことを恐れるな、っていうメッセージの篭った歌詞が何度オレを励ましてくれたことか…!

2曲目は、ちょっと病んでるっぽい感じの、カッコイイ曲。
実は十八番だったりする。
3曲目は、バラード。
声質的には一番あってると思う。
歌いやすいし。
だからこそ、絶対気は抜かないけど。
4曲目は、打って変わってデスヴォ満載の悪魔題材の曲。
まさにV系の真髄みたいな。
5曲目は、綺麗なラブソング。
ロミ・ジュリっぽい内容で、音につられて思わず泣きそうになった。
…何回も。



「「「「「………。」」」」」



終わった後の余韻、っていうの?
みんなで沈黙する。
それから、そっと各々の楽器から手を離し、息を吐いた。



「やべぇ…。マジ興奮する。」

「…なんか、初めて演奏するのが気持ちよかったかも。」

「あぁ…」

「………。」



オレも、楽器の自分から離れるべく、閉じていた目を開けると、何故かみんな恍惚とした表情を浮かべていた。



「ど、どしたの?」



オレ、なんかやらかした?
まさか、やっぱ相応しくないからって…。

不安になって、ニコニコ笑う楽を見ると、



「…だから言ったろぉ?なぁ、漆祈ぃ?」



………若干、空気が黒いのは気のせいだろうか?
気のせいにしていいだろうか?



「悪かった、楽。キーリ、」

「はいぃ!」

「すまなかった。」

「は?」

「正直、認めてなかったんだよお前のこと。だが、合わせてわかった。」



え…認めて、もらえてなかったの?



「キーリ、」

「…はい。」

「俺たちにはお前が必要だ。その声が欲しい。『No Name』のキーリになってくれ。」



頭が真っ白。
舞台で輝いてた彼らが、オレを必要だと言ってくれる。
嬉しくて、嬉しくて…。
そしたら、涙が出てきた。



「へ、平凡、だけっ、ど…がん、頑張る、かっ、ら…よろ、しっお願い、しま…うぅ、」


その後、楽に抱きしめられ、キルに慰められ、ルトがハンカチを貸してくれ、漆祈が楽に何か言われて苦笑していた。

なにはともあれ、ちゃんと認められたようです。



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