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幻想ノ噺


〜カイside〜



昼夜が逆転した。
けれど、何も変わりはしない。
レイン様は、いつも通り無邪気に笑っていて、相変わらず僕が作るお菓子を嬉しそうに食べてくれる。

あえて変わったことを言えば、レイン様の食事に血液も必要になったことくらいか。
『食事』は、話し合ってジオと交互にあげることに決めてある。
常に首筋に残る牙の跡が、まるで所有の証のようで思わず触れながら笑んでしまう。



「レイン様…」



名前を口にするだけで、欲が渦巻いてくる。



「………は、……き?」



これは、ジオの声だ。
この部屋にいるのだろうか?



「……。だ〜い好きだよ!」



え?レイ、ン、様?
今の言葉は何?

ドアを少し開けて覗くと、レイン様とジオがいた。
ジオは、カウチに横たわりレイン様にその頭を預けている。

どうして?

ふと、目を上げたレイン様と目が合った。



「カイ?どうしたの?」

「あ、いえ…」



中へ入り、レイン様の目の前に立つ。
不思議そうな顔をするレイン様が、小首を傾げた。



「…レイン様、」

「なぁに?」

「レイン様は、ジオが好きなんですか?」
「好きだよ。」

「っ!」

「でも、カイも同じくらい好きだし大切だよ。だって、僕の家族だもの!」

「家族…」

「うん!僕、パパもママもいないけど、ジオとカイがいてくれたら平気だよ。寂しくなんかない。」



純粋な目で、純粋な思いで、純粋な笑顔で、レイン様は僕の願いを粉々にしていく。
いや、僕だけじゃない。
ジオも同じだ。
望みは、こんな汚れた望みは叶うはずもなかったんだ。



「カイ。カ〜イ!」

「あ、はい。」

「どうしたの?ボーっとして…。あ、もしかしてカイも疲れてるんだね?じゃ、こっちおいでよ。」



カウチの空いたスペースを叩く。
そこに座れば、髪の毛を引っ張られた。



「いっ!」

「僕の肩貸してあげる!」

「…ありがと。」

「どういたしまして。」



まだまだ小さく、華奢な細身の肩は頼りなかったけれど今はそれに甘えた。
優しく、僕らの汚い所さえ包んでしまうんじゃないかというくらい温かな君の存在に…。



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あきゅろす。
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