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幻想ノ噺
覚醒

〜カイside〜



満月の夜が来てしまった。
僕とジオは、レイン様の部屋に向かう。



リン…―



「レイン様?」

「…カイ、ジオ」

「どうなさいました?」



ジオが暗闇から急に現れたレイン様に近づく。
レイン様はもどかしそうな顔をしながらも、不安そうな迷子の顔をしている。
いつも見る、明るい無邪気な顔ではない。



「喉が、渇くんだ。」

「そうですか。何かほしいものは?」

「………。」

「レイン様?」

「…僕、おかしくなっちゃったのかな?」



震えた声に、思わずその折れそうな体を抱きしめた。
泣いているのか、じんわりと胸のあたりが濡れてくる。



「僕、僕ね…」



―――血が欲しいの。



くぐもった声でもはっきりと聞こえた。
震える体は、相変わらず小さく離してしまえば、風に攫われていきそうだ。



「おか、しぃよ、ね。でも、でも…ひっ…く」



僕は、柔らかな金髪を撫でる。
少しでも落ち着くように、不安が和らぐように…。
ゆっくり、ゆっくり。



「レイン様、おかしくありませんよ。」

「カイ?」

「何もおかしくありません。…だから、ね?」



あぁ、今きっと僕の顔を鏡で見たら、すごく酷い顔だ。
沈みこみそうな、暗く澱んだ目をしているだろう。



「いいの?」

「はい。」

「…ん。」



少し体を離して、僕の首筋をレイン様に晒す。
少し躊躇った後、小さく口を開けたレイン様がその白い牙を、僕に突き立てた。



ブツリ…



牙が肉に沈みこむ感じは、思ったほど痛くはなっかった。
まぁ、レイン様だからというのが強いか。
それ以上に、僕は歓喜していた。
レイン様が僕の血を啜ることに。
レイン様を血で縛りつけることができるようになったことに。

愉悦に歪めた目は、ジオを捉えた。
同じ暗い瞳で、じっと僕を見ていた。
その中に確実に嫉妬が含まれていることに優越感を感じた。



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