幻想ノ噺
禁断の森の城にて…
そこは、決して入ってはならない森。
侵してはならない、踏み込んではならない場所。
そんな森の奥、蔦が這う城がある。
誰にも知られず、ひっそりと…。
――――――――――――――
「ジオ、ジオ!」
一人の少年が、黒ウサギのぬいぐるみを両腕で抱きしめながら城の中庭を探す。
少年は、金髪を黒いレースで一つにまとめ、翠緑の瞳がとても綺麗だった。
来ている服は濃紺の貴族の子供のような格好で、フリルがふんだんに使われ、少年の可愛らしさを強調している。
「ジオ、」
「こちらですよ。どうしましたか、レイン様。」
「ひゃっ!びっくりした〜。」
中庭のすぐ近くの茂みから、目当ての人物の声を聞き、ビクリと体を跳ねさせる少年、レインを、木陰で本を読んでいた青年が手招きする。
青年は、紫がかった黒い長髪を白のリボンで束ね、アメジストの瞳が美しい、まさに美青年だった。
白を基調とした従者のような、軍服のような格好をしており、金のサーベルを少年がいる方とは逆の所に置いてある。
眼鏡をした彼、ジオは、レインを自分の膝の上に座らせ、優しく微笑む。
「あのね、森の奥に綺麗な泉があるでしょ?」
「はい。」
「それがキラキラしてて綺麗で、宝石みたいな鳥が飛んでたの!」
「あぁ…。それはきっとカワセミという鳥ですよ。青かったでしょう?」
「うん!カワセミっていうんだ…。いいな〜…。僕も泉に行ってみたいなぁ。」
「駄目ですよ。」
「むぅ…わかってるよぉ。」
「そんな拗ねないでください。今、カイがベリータルトを作ってますから、出来上がったらここで食べましょう?」
「ホント!やったぁ!!」
はしゃぐレインの首には、黒いチョーカーに金の鈴が付いていて、チリチリと可愛らしく鳴った。
「それより、あまり日に当たらないでくださいよ?」
「はぁい。いいなぁ…ジオやカイは日の光もへっちゃらなんだもん。」
「…大きくなれば、レイン様も平気になりますよ。」
「うん!」
ニコリと屈託なく笑うレインの頭を、頬を、ジオは優しく撫でた。
少し悲しそうな顔をしながら。
「じゃあ、タルトが出来るまでお話して!」
「いいですよ。今日は、眠り姫のお話をしましょうか。」
柔らかな木陰の下、2人はタルトが出来るまでお伽話をして楽しんだ。
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