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幻想ノ噺


目が覚めると、いつものようにシェイが隣にいて、僕はその腕の中に包まれている。
温かな体温は、優しく僕を包み離す気配もない。

いや、離さなくていいんだけどね…。



「シェイ…僕、シェイに会えて良かった。」



目を閉じ、寝息を立てるシェイの頬にそっと触れる。

つくりものめいたその顔は、たしかに綺麗なんだけど、顔以上に僕はこの温もりが好きだ。
側にいる、と実感できる。
別に疑ってるわけじゃないけどさ…。

そうそう、保健室の先生と英語の先生は学園を去った。
去ったというより、皆の記憶からいなくなったと言った方がいい。
誰も、その二人を覚えていないんだ。
シェイによると、天使は純粋だからこそ独占欲から自分達の記憶を消してしまうらしい。
僕は、いなくなる前日に保健室の先生に言われたから知ってるけど。



“わしらは明日、旅立つ。柏木君、君との時間は楽しかった。金髪のと、末永く幸せにの…。それから、今を楽しむんじゃよ。”



はい、と僕は答え、別れた。



「幸せに、か…」



僕は今、十分幸せだ。
それに前と違って、『今』を楽しんでいる。
学園の嵐を静め、平穏な日々に戻り、また相談室なんかをやってる。
そしてなにより…



「ずっと側にいるよ。」



大好きな人の隣にいられるのだから。

僕はシェイにそっと腕を回し、抱き着いた。
胸板に耳をくっつければ、トクン、トクンと心臓の、命の音が聞こえる。
すりり、とほお擦りするとシェイ体が震えた。



「ふふ…くすぐったいですよ。どうしました?」

「シェイ、大好き。」

「突然どうしました?」

「僕は幸せ者だなぁって…」

「あぁ…。なら私もそうです。でも、」



―――もっと幸せにしてあげます。



「えー、欲張りだなぁ。でも、もっと幸せにして…。」

「はい。私もお願いします。」

「うん。まぁ、とりあえず…」



僕は、もぞもぞと体を動かしてシェイと同じ目線になると、その唇にキスをした。



「おはよう、シェイ。」

「おはようございます、類斗。」



額をくっつけあい、二人で微笑み合う。

今日も幸せでありますように。
明日も幸せでありますように。
そして、ずっとずっと一緒にいられますように。

そう神様に願うんだ。

ふふ…欲張りでしょ?



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あきゅろす。
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