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幻想ノ噺
ツーフレーズ

今日も、教会へ行った。
最近、天使は同じ曲ばかり弾いている。
それはカノン。
まるで、何かを待っているかのように切なく繰り返される。



「   」

「?」



何かを呟く天使。
でも、何を言ったのかは聞き取れなかった。



ポロロン…



何を弾くでもなく、ハープ?に指を滑らせる天使。
戯れに出された音が、悲しそうに響いた。

僕は思わず天使の所に出て行こうとしたけれど、はっとして止めた。
だって、天使は『ケガレ』が触れてはいけないから。
そう本に書いてあったんだ。
僕はもう何度も蓮見君によって汚れてしまった。
だから触れてはいけない。
近づいてはいけない。

僕は、ボロボロの体を引きずって教会から離れた。



――――――――――――――



寮の部屋が騒がしい。
きっとまた転校生が生徒会を連れて…



「ホント、カッコイイなお前!なぁなぁ、何でこんなとこにいんだ?あ、もしかしてオレに」

「ルイ、」

「っ!」



体が震え出す。
変な汗が出てくる。
生徒会の人も、転校生も目に入らない。

何故…何故お前がここにいる!?



「はす、み、君…」



ニィッと笑う蓮見君はあの時と全く変わらなかった。

カタカタ震え出す僕に近づき、髪を掴まれ、僕は床に叩きつけられた。



「プクク…お、おい、類斗が可哀相だろっ!」



笑ってる転校生。
生徒会の人もいい気味だと笑っている。



「い、たぁ…!」

「ルイ…。」



髪を掴んだまま、僕の顔を上げさせると、キスをしてきた。
その途端、あの頃の記憶が走馬灯のように巡り、体が硬直した。



「ルイ…俺がいない間に随分変わったな。何より…」



―――天使の匂いがする。



怒りに歪んだ顔は、相変わらず笑っている。

怖い…怖い、怖いっ!



「は、蓮見?」

「馬鹿共は出てけ…死にたいなら、」

「「「「「「っ!」」」」」」

「ま、待って!」



けれど、誰も待つものはいず、部屋に僕と蓮見…いや、悪魔だけが残された。



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