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幻想ノ噺
間奏
〜Side王子〜

つまらない、つまらない、つまらない。
全てが自分の思うようになって、なに一つ刺激がない。

国で一番の美人と言われる姉の誕生日を新しい船で祝っているが、俺目当ての奴らばかりで吐き気がする。
しかも、その姉は近親相姦を迫ってくるような奴だ。
ホント、気持ち悪い。

いっそ海に消えれば、この気持ち悪さも消えるだろう。
別に死のうが生きようが、悲しむ奴なんかいない。



「逝ってみるか?」



身を乗り出して目に入った下の海は、月明かりが波に反射して俺を拒むかのようだ。
しかし相反して、海の闇は引きずり込もうとするかのようでもあった。
邪魔なものは全て置いて、海に落ちた。
ひんやりとした水は、心地良く受け入れてくれる。
けれどやっぱり、俺は陸の者だから苦しさに苛まれた。
苦しいが、身を委ねた。
すると、意識が消える瞬間、目の前に人魚が現れた。
陸の者にはない色のオッドアイが綺麗だと思った。
そして、欲しいとも…。



――――――――――――――



気がつくと、浅瀬にいて誰かが俺に触れていた。
思わずその腕を掴むと相手が怯えているのがわかった。
うっすら目を開ければ、例の人魚がいる。



「クク…捕まえた。」



黒い欲望が心を支配していく。叫び、抵抗をする人魚は平凡なのに、どうしようもなく手に入れたくなった。
どうしようもなく、支配したくなった。

激しい抵抗にふっと力を緩め、ちょっとした悪戯にブレスレットを盗れば、人魚は慌てたように返せと言う。
取引を持ち掛け、俺は久しぶりに楽しくて仕方がない気持ちのまま宮殿に帰った。



「あ、このブレス…」



よく見れば、かなり前に姉が失くしたと言っていた俺のとペアの物だった。
俺のはもう捨ててしまってないけれど…。



「明日の夜が楽しみだ。」



そう呟いて、テラスから海の方を見た。



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あきゅろす。
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