狂気ノ噺 ・+ 「い゛るぅ…っ!」 「じゃあ、死ぬ時も一緒。だから、死ぬことを『禁じる』。」 その瞬間、シトの呪縛がかけられ、背中をぐちゃぐちゃにしていた手が更に入り込み、心臓を掴んだ。 「にけぇ…痛い?」 「あ…かはっ…!」 「痛いよね?でも、赤いの綺麗だよ。」 そう言って、オレの口端から伝う血を舐めあげ妖しく笑む。 「甘いな…。」 「し、と…」 「なぁに?」 「あ、い…して、る…」 「………。」 オレが微笑み、赤く染まったシトの唇に自分のそれを重ねる。 動いた瞬間、ぐちゅりと中の手が少し抜けて、気絶しそうな痛みが走った。 「ニケ、ニケ…ごめん。ごめんね。でも、もう…」 ―――天から堕ち、狂い始めてしまって止められない。 「いいよ…お、れは、どんなシト、も…好き…」 あぁ、またシトが泣いている。 泣いている顔は見たくない。 ずるりと背中の手が抜けると、傷が癒えていく。 「シト、泣かないで。大丈夫。オレなら大丈夫だから。」 ―――狂うなら一緒に狂おう? どこまでも、一緒に…。 たとえどんなことがあろうと、離れはしない。 オレの居場所は、シトのいる傍ら。 「大好き…。大好きだよ、シト。」 「ニケ、ニケ…」 「シトに与えられる全てを、受け入れるよ。そばにい、る…」 ぐじゅ… 再び激痛が襲う。 見れば、左胸に手が突き刺さり、血がその周りを濡らした。 「ニケ…一緒、ずっと…一緒」 ニコリと笑い、またオレに呪縛をかける。 「私が、与える全て、『快楽となれ』。」 激痛が過ぎる快感に変わったと同時に、オレの心臓を抜き取られた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |