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狂気ノ噺
3+

う〜ん…。
あの人も美味しくなさそう。
あっちの人は脂っぽそうだし…。
やっぱ、理想ヒロちゃんだよねぇ。
…って、ダメダメ!
ヒロちゃんには生きててもらわなきゃ。



「ハァ…だめだぁ。どれもこれも美味しそうじゃないよぉ。」



お腹は空いてるんだけど、いまいち食欲がわかない。
そそられない。



「これを機にカニバやめようかなぁ…。なんて、無理かぁ。」



ボクは、人の血肉しか受け付けないからなぁ。
やめたら死んじゃう。
生きることと食べることは同義だから。
シュウもそうだ。

それにしても困った。
お腹は減る一方なのに、食べたいと思わない。
渇望しているものがあると、他に目がいかないのと同じだ。



「お腹すいたよぉ…」

「おにいちゃん、おなかすいてるの?」



声のした方を見ると、まだ幼い女の子がいた。
体が薄汚れている所や、ボロボロの服からしてスラムの子供だろう。



「わたしもね、おなかすいてるんだ。」

「そうなんだぁ。」

「おかあさんがね、うごかなくなっちゃってね。たべものなくなっちゃったんだ。」

「お母さんが君に料理を作ってくれてたの?」

「ううん。あのね、おなかすいてたからね、」



―――たべちゃったの。



無邪気に笑う女の子の手を見れば鈍く光るナイフ。
なぁんだ。
ボクと同じかぁ…。



「お腹すいた?」

「うん。だからね、たべようとおもうの。」



笑ながら近づいてきた女の子。

ヒロちゃんのこと食べちゃいたかったけど、食べられないなら死んじゃってもいいかなぁ。
どうせ飢え死にするなら、誰かの肉になれるならそれもいいかも。

空を切るナイフの音と、ドンッという衝撃。



「っ!?」

「何やってるんですか、ユキ!」

「び…」

「はい?」

「びっくりしたぁ…」

「びっくりした、じゃないでしょう!」



目の前には、ヒロちゃんがいて、女の子は打ち所が悪かったのか、建物の壁のとこでぐったりとしている。
十中八九、ヒロちゃんが突き飛ばしたのだろう。



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