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狂気ノ噺
異常愛者とオレ+

オレの恋人は、狂っている。
執着心は人10倍、嫉妬心は人100倍、独占欲は…



「ねぇ〜、今何考えてんの?」

「クロユリ?」

「頭ん中、オレだけでいっぱいにしててよ。」



カテーンで締め切られた薄暗い部屋の中、隻眼の綺麗な顔がオレの平凡な顔を覗き込んだ。
緑色の目は天然もので、いつ見ても綺麗だと思う。
銀髪の髪は、後ろ髪が長いアシメ。
黒い眼帯が更に彼の魅力を引き出している。
危険な匂いと、怪しさ。

失われた片目は、オレの中にある。
どんなに離れても離れられないようにと、クロユリが自分で抉った目をオレに移植した。
じゃあ、オレの元々の片目はというと、クロユリの部屋の机の上、綺麗なガラス瓶の中、液体の中央で保存されている。

最初からそんな恋人を受け入れられていたかというと、正直『No』だ。
DVのように殴られることはなかったけど、一々言葉が怖かった。
だって、オレを食べたいとか言って、包丁用意してくるし…。
食べたらずっと一緒でしょ?って言われたからね。
でも、オレは案外冷静に対処していたように思う。
食べても、分解されてオレの肉の栄養だけ吸収されて、残りは結局一緒になんかなれないよ、と。
そしたら、妙に納得して代わりにこの部屋に閉じ込められた。
勿論脱走したさ。
その度に、関わった人が事故にあったり大怪我した。
逃げたらオレ以外の人間が傷つけられてしまう。
実際にオレに絡んできたチンピラは、今もまだ昏睡状態できっと、植物人間と変わらないんじゃないだろうか。

けど、結局絆されてしまった。
分岐点はあれだ。
家族からの『出来損ない』の一言。
自分でもそう思うよ。
エリートで美形な家族なのに、仲間外れのような存在。
本当に家族とは、半分しか血がつながっていない。
世間的には騒がれていないが、オレの母は父に強姦されて身ごもった子供だ。
騒ぎにならないよう、母が病んで精神病院に入院してしまった後、オレは父に引き取られて育った。
隔離されたような生活で、とても温かい家族なんてものは味わえなかった。
それでも、同情的に目をかけてくれた兄弟たちにいろんなことを教わった。
けど、結局は家族の絆が第一で『出来損ない』とオレを呼んでいるのを聞いてしまった。
走って、帰ってきた家を逃げ出して、一人歩いてたら、クロユリが無言で抱きしめてくれた。



『オレは、そばにいるよ。何があろうと、離れないし、離さない。』



怖かった執着心が、この時ばかりはオレの居場所をくれる温かな言葉になった。
んで、絆され今に至る。



「アサキ、アサキの目に映るのはオレだけだよね?」

「考えてることもクロユリに関係あることだけだよ。」

「ふふ。アサキ、アサキ、あ〜さ〜きぃ…」

「何?」

「殺したいほど大好きだよ。」



ふぅ…まったく。



「殺したら、残るのは肉塊だけだから。生きてるからオレなんだからな?」

「うん。わかってるよ〜。別に殺さなくても、アサキはずっとそばにいてくれるでしょ?」

「ここ以外にい場所なんてないから。」

「あったら、壊してやる。」

「だからないってば。」

「うん。知ってる。アサキのことならなぁんでも!」



ぎゅうッと抱きしめられ、クロユリの温もりがオレに移ってくる。
いや、分け与えられている、って方が正確か?
どちらにしても、オレは些細なこの瞬間ですら窒息しそうなくらい幸せを感じている。



「幸せすぎて死にそう…。」

「死んでも、一緒にいるよ。」

「うん。」





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