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狂気ノ噺


海辺の教会で、オレは生活している。



「ニケ、もうすぐ礼拝の時間なので、準備をお願いします。」

「はーい。」



皮肉なことだ。

何でオレたちの仲を裂いた神様の場所にいなきゃいけないんだろう?

オレは、あのまま気を失い、気がつけばここにいた。
牧師さんはとても優しく、何も言わずにオレを置いてくれた。



「おはよう、大嫌いな神様。」



オレは、祭壇に向かってそう言うと、礼拝に来る信者の方たちのために準備をした。



「やぁ、ニケ。」

「おはようございます、ケインさん。」

「今日も僕が一番乗りだね。」

「そうですね。まぁ、マリーのパイプオルガンでもゆっくり聴いててくださいよ。」

「そうするよ。」



ケインさんは、熱心な信者で、この街一番の富豪の息子さん。
教会から一番遠い所に住んでいるのに、いつも一番乗り。
カッコイイし紳士的だと、女性には人気だが、オレは苦手だ。
視線がねっとりしてて気持ち悪い。

マリーは、盲目の少女。
彼女も教会で一緒に住んでいる。
大人しそうな見た目とは裏腹に、結構活発な子で、盲目であっても問題はないかのように遊ぶが、見てるこっちはハラハラもの…。
人形みたいに可愛いので、人気者だ。



「そうそう、今夜食事でもどうだい?たまには教会以外での食事も楽しいだろうし。」

「いけませんよ、ケイン君。ニケは、私たちのものですからね?」



牧師さんが、茶目っ気たっぷりにウィンクしながら、オレを下がらせた。



「ニケが欲しかったら、男前度をもっとあげなさいよ!」



いつの間にかマリーもいて、オレの腕にしがみついている。
オレは苦笑しながらも、二人にかかればどんなやつも形無しだな、と思った。

今、こうしてる時にも思う。
シトはどうしているのだろうかと…。

今日も変わらず、礼拝が始まった。

マリーの奏でるオルガンの音をシトと手を繋ぎながら聴きたかったな…。

後ろの席でまどろみながら、オレは無い温もりを探した。



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あきゅろす。
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