狂気ノ噺
提灯鮟鱇の恋+*
どんなに愛していても
どんなにそばにいても
この渇きは癒えない
――――――――――――――
あの子がすごく大好きで仕方がなかった。
オレは、あの子が喜ぶことならなんでもした。
大概それは喜んでくれなかったけど。
あの子が喜んだ顔をしたのは、付き合い始めの頃だけ。
最近は泣いてばっかいる。
どうしてだろう?
どうしてかな?
オレには理解できなかった。
「灯、ねぇ、あかりぃ…」
「や、も、やだぁ!」
「何が嫌なの?オレ、ずっとそばにいるよ?何でヤなの?それに、沢山イイコトもしてあげてる。痛みなんかないでしょう?」
「ひぐっ…やぁっ!…たすけ、」
痛みなんか一切ない。
オレの体以外使ったこともない。
快楽と愛を注いでるのに、何で拒絶するの?
どうして喜んでくれないの?
「何が嫌?」
「ふ、うぅ…も、解放して…外に、出して…」
「………。」
「お願い、コウ…。」
「ごめん。それは、聞ケイナイ。」
気持ちイイはずなのに、灯から漏れる声は悲鳴のようで、痛くもないのに涙がこぼれた。
「コウ?」
「なぁに?」
「何で、泣いてんの?」
「さぁ?知らない。それよりも、灯だけが大好きだよ。オレだけの灯…」
このまま体が離れなくなればいい。
オレの体が、灯の一部になってしまえば…。
そしたら、この渇きにも似た感情は消えてくれるのかな?
そしたら、灯もまた笑ってくれるかな?
――――――――――――――
オレと灯は繋がった。
手首の血管と血管を縫い合わせた。
手術は無事成功。
だけど…、
「灯、ねぇ、あかりぃ…」
「………。」
灯が壊れてしまった。
それでも、オレは前より満たされている。
同じ血が、オレと灯を繋いでいる。
離れることはできない。
それがとても嬉しくって、縫合された手首を愛しげに舐めれば、灯の目から涙がこぼれた。
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