狂気ノ噺
3
〜エドSide〜
目が覚めて、まず、ルイが目に入ることが幸せ。
次に、ルイがおはよう、とキスをしてくれることが幸せ。
毎日が幸せでたまらない。
「ルイ、今日変な夢見たよ。」
「何だ?」
「僕が魔王のルイを倒しに行く夢。ルイは魔王なんかじゃないのにね?ふふ」
「ほう…。まだ少し残っているのか…。」
「え?なに?」
「何でもない。不思議な夢だな。しかし、そんな夢を見るほど私を愛しているのか?」
「な、なんでっ!?」
あ、愛してるなんて当たり前じゃん!
だけど、こんな風に聞かれると恥ずかしい…。
思わず、身を起こすとルイがニヤリと笑った。
「良い眺めだな、エド。」
「うわぁっ!」
素っ裸なのを忘れていた。
慌ててまた横になると、ルイが抱き寄せる。
「ふふ…愛しい。この柔らかな肉も、指通りの良い髪も、唇も、心も…私だけのもの。」
「ん…ルイだって僕だけのものだよ。」
啄むようなキスをして、相手の一つ一つを確かめていく。
これも僕にとっては幸せ。
僕には、1年前以前の記憶がない。
いや、基本的な記憶はあるのだが、人との記憶がすっぽり抜け落ちているのだ。
気づけば、ルイの腕の中で、毎日僕を慈しんでくれた。
真綿に包むように、優しく、優しく…。
そんなルイに、僕は恋してしまった。
暫く悩んだが、すぐに胸の内を告白した。
想いは同じだった。
それから毎日、毎日、ルイは僕に『幸せ』をくれた。
僕にしてみれば、ルイに出会えたことそれ自体が『幸せ』だけれど…。
――――――――――――――
〜ルイSide〜
腕の中で二度寝に入ったエドを見つめ、少し開いた口にキスをし毒を流し込む。
「エド…私だけを見て、私だけを感じて。…過去はわすれなさい。」
名残惜しいが、これでも魔王のため、執務をこなさなければならない。
そっとエドの側を離れ、身支度をしてから玉座の間に行く。
「…それで?」
「は!現在、獣の檻にて最後の人間を処理しております。」
「あぁ…最後は、たしかエドを酷く犯した勇者一行だったか。」
「はい。もうすぐ処理が、」
「足りん。」
「は?」
「奴らに、火の罪の毒を飲ませろ。簡単には死なせん。気が狂い、自らの心臓を握り潰すまで生かしてやる。エドを犯した罪の償いには程遠いがな。クク…」
「は!」
エド、お前を苦しめた奴らは皆いなくなったぞ。
これで誰もお前に触れた者はいなくなる。
完全に私だけのものになる。
エド、エド、あぁ…エドウィン…
「愛してる。」
もう逃がさない。
End
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!