狂気ノ噺
3
何だろう?
甘い香りがする。
香ばしい匂いも…。
ゆっくり、目を開けると白いレースの天井…いや天蓋。
どっかのお伽話に出てきそうなベッドに横たわってるんじゃないだろうか?
「………」
天国?
口を動かしても出ない声に、急速に水がほしくなる。
「おや、起きたみたいだよ。」
「え、嘘!」
「…良かった」
「うんうん、良かったねぇ。」
聞いたことのない声。
「ちょっと待っててねぇ。今、水持ってくるからぁ。」
微妙に他より高く幼い声の主が、パタパタと遠ざかる。
「体、起こしますね?」
色っぽさがある低く甘い声の主が、そう言って体を起こしてくれた。
が…
「ッッッ!」
息も出来ないほどの激痛に、思わずその人の腕を掴み、爪を立てた。
「痛むみたいだね。それともドールの起こし方が下手なのか…」
凛とした声の主は、そう言って優しく頭を撫でる。
持ってきてくれた水を飲み、喉を潤してから聞いてみた。
「あの、ここはどこですか?」
「あは、聞いて驚け『クレイジーハウス』だよぉ。」
「………嘘。」
「「「「ホント。」」」
クレイジーハウスといえば、猟奇殺人鬼たちの住み処じゃないか。
ああ、僕の不幸体質はどのくらい根が深いんだろうか。
嫌だけど、僕にはいくあてもない。
そうして、クレイジーハウスでの生活が否応なしに始まろうとしていた。
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