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狂気ノ噺


〜魔王Side〜



瀕死の状態で目の前に横たわるエドウィン。
私は、そんな彼に近づき頬に触れる。
彼は、小さい頃から変わっていなかった。



「エド…、」

「ひゅー………ひゅー……」



弱々しく息をする姿はゾクリとするほど美しい。



「エド、辛かっただろう?」

「ルー、ウェンス…?」

「苦しかっただろう?」

「…ルイ、」



あぁ、欲しい…。
幼子の貴方が、少し成長した時に呼びはじめた呼び名だ。



「…殺し、てよ…」

「それはできない。」

「オレ…おか、された…たくさ、の…人に……」

「そうか…。」



私は、エドウィンを抱きしめ自室へ移動する。



「貴方が死にたいというなら、その命、私がもらい受ける。」



エドの返答を待たず、くちづけをし、私の精気と堕落の毒を送り込んだ。

傷は癒え、瞳が虚ろになっていく。



「ずっと、この時を待った…」



そう…ずっと。
エドが欲しくて欲しくて堪らなかった。
きっと手に入らないだろうと諦めていた。

だが、人間たちは私に彼を差し出してきた。
『勇者』として育て上げ、『魔王』と戦うように仕向けた。
だが、『仲間』がエドを、人間のために戦う、という考えから引きはがした。



「ルイ…」

「私の元においで。人間など貴方には必要ない。」

「ルイ、だけがいればいい?」

「そう。私だけが、貴方に必要なもの。また、貴方だけが、私に必要なもの。」

「オレは…必要?」

「えぇ。」



堕落の毒は、甘い束縛。
ぽろりと零れた涙を唇で掬う。



「ルイ…ルイ…」



―――優しく、殺して…。



その言葉に、私は口角をあげてくちづけをした。



「貴方が望むなら…」



その瞬間、欲しかった小鳥は自らの翼を封じ込め、私の元へ降り立った。



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あきゅろす。
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