狂気ノ噺
哀し+
※『愛し』の続き
今、魔族の里は人間の手によって壊されつつあった。
きっかけはなんてことはない、偏見を持った勇者気取りの人間が一方的に攻めて来たのだ。
「キセ!生きている者は城の庭へ!怪我をしている者は大広間へ!」
「人はどうするのですか?人間に引き渡しますか?」
「そんなことしたら、その人間たちは殺されるぞ!?…っ拷問されながらな。」
「わかりました。」
「急いでくれっ!」
魔王はそう命じると自らも一方的な戦場、否、殺戮現場に黒い翼を広げ飛び立った。
城近くにいた民には今すぐ城へ逃げるように言う。
「魔壁があった筈なのに…」
「そんなの僕が壊したよ。」
「え?」
下を見れば紫紺色の服に見を包んだ魔力の片鱗が見える少年がいた。
そして、その足元には手足が何かで押し潰された魔族。
残酷なことに無理矢理生かされている。
「なん、てことを…」
「だって魔族じゃん。何しても誰も咎めやしない。」
ぐちゃっ!
「っ!」
魔王の目の前でその魔族は声をあげることすらできずに完全に潰された。
少年は見上げると…
「次は君。」
そう笑った。
飛んできた魔法を魔王は流した。
そして目の前まで降りると、その額に人差し指を当てる。
「!」
「全て忘れろ。今までのこと全部。」
カクンと力を失った少年を横たえ、記憶と魔力を取り除くと次へ飛び立った。
里の中はは至る所に血が飛び散り、散切れた手足、変に捩曲がった身体、顔だけ切り刻まれた死体が沢山転がっていた。
「危ないっ!」
「っ!」
ぶつかってきたのは、キセだった。
そして真っ二つに切り裂かれ、塵と化していく。
「キセェェェ!!!!」
魔王は叫び、頬を涙に濡らした。
気づけば勇者気取りの人間も、その取り巻きの人間も皆、無惨な骸となって横たわっていた。
「こんな悪夢、これで最後…」
魔王はそっと微笑んだ。
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