狂気ノ噺 2 痛いなんて叫ぶ暇もなく、彼らは着々と僕を壊していく。 体から響く醜い音。 口に広がる鉄錆と吐瀉物の味。 骨、何本いったんだろ?内臓破裂してるかもな。 だんだん耳が遠くなる。景色だって霞んで見えない。 色としてだけ存在する今の僕から見た景色に、そっと別れを告げる。 ホント、ろくでもない人生だったなァ。 父さん母さんが交通事故で亡くなって、親戚にたらい回しにされた揚句、遺産を全て持って行かれたし、とんでもない施設に入れられた。 小・中と、そのことでいじめられたし、それはどんどんエスカレートして一時入院する羽目になった。 高校はそんな事がないようにと、小中高一貫の全寮制の男子校に入った。 そしたら、男なのに告白されるし、拒めば襲ってくるし…。 友人だって、押し倒してきて、拒絶したらこの様だ。 ただでさえ、いろんな信奉者から制裁を受けていたというのに…。 もう、いい加減疲れた。 「つか…れ、た…」 そう呟いた瞬間、血の臭いが一段と濃くなった。 僕が刺されたんだろうか? まぁ、どっちでもいい。さっさと、この世界とお別れしたいんだけど? 痛みが加えられなくなった。不思議に思うけど、どうしてか確認する術が僕にはなかった。 ただ、闇に引き込まれていくさなかに、真っ赤な天使たちが三人見えたような気がした。 ―――――――――――――― ねェ…。 僕、十分頑張ったよね? もう父さんと母さんとこ逝っていいでしょ? もう、目覚めなくていいでしょ? 酷い世界、苦しい世界、つらい世界。 僕には、その程度の価値しか見出だせなかった。 もっと生きたかったか、と問われれば、勿論そうしたかった。 でも、もう疲れた。 これで十分。 18年間、生きてきて何か言えるとしたらそれは決して感謝の言葉じゃない。 それは… 「ごめ…なさ、ぃ…」 生きていたことへの、懺悔の言葉。 [*前へ][次へ#] [戻る] |