狂気ノ噺
へ
〜Sideファイ〜
うずくまる愛しい身体。
そして俺は彼の身に何が起こったのかわかった。
「あ〜あ、思い出しちゃった。」
そう言えば、びくりと震える宮。
触れようとすれば、手を払われる。
でも残念。
もう逃がさないよ?
「宮、君の世界はもうないよ。」
ないのにどうやって戻ろうというの?
「俺らが宮の唯一の『世界』なんだよ。」
「違うっ!」
「違わない。」
「違うっ!この人殺しっ!!」
人、殺し?
「あ…………アハハハハハハ!!人殺し?俺らは人なんか殺してないよ。」
「っ!龍を殺したじゃないかっ!」
「龍?あぁ、その男は存在しないよ。」
「え?」
ガチャリ…と音がして、アールが帰ってきた。
「ね、アール?龍なんて男、存在しないよね?」
アールは、目を見開き、そして妖艶に吊り上げた口から告げる。
「あぁ。存在しねぇな。社会的に抹消しちまったからな。ついでに、お前ももう死んだことになってんぜ?」
「そん、な…。龍、龍、龍…」
苛立つ。
その唇からあの名が紡がれるなんて許さない。
ねぇ、俺らはこんなにも宮のこと愛してるよ?
誰にも取られたくない。
誰にも渡さない。
まだ不十分なの?
だからアイツなんかの名前を口にするんでしょう?
ならもっとどろどろに快楽にとかしてあげる。
二度と起き上がれないくらい、蕩かして、俺らしか見れなくしてあげる。
「ファイ。」
「何?」
「最高の快楽を…」
「そうだね。」
溺れさせて、浮き上がらないように…。
俺は引き出しを開けると、注射器を取り出した。
それをアールに渡し、俺は宮の細く小さな身体を抱きしめる。
「「愛してる、宮。」」
泣いて龍を呼ぶ宮の中にクスリが注射された。
宮、宮、宮。
もっと気持ち良くしてあげるからね?
だから、俺らの元においで。
君のためなら、なんでもしてあげるよ。
そう…なんでも、ね。
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