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狂気ノ噺


姫君たちが媚びを売る中、突然あたりが静まり返った。



「ぎゃあぎゃあと煩い。媚びるしか能のない女に興味はない。」



現れたのは、所々赤黒い染みができた服を纏う戦の勝者で覇者がいた。
よく観察しなくとも、それが美形であることなんかすぐわかった。
色めきだった声しか聞こえない。



「ラ、ラシスト様。恐れながら申し上げます。私がこの姫たちの中で高貴で、美しく、聡明でした。私こそがあなた様の望む」

「黙れ。その軽い頭を跳ね飛ばされたいか?」



姫君たちが瞬間、黙った。
命は惜しいのだろう。
ま、利ける口のないオレとしては、関係ないだろうが…。

けれど、次の言葉でオレを凍てつかせるには十分だった。



「あぁ…見つけた。何年ぶりだ?我が神子よ。」



この声、まさか…。
でも、死んだはず。



「なぁ、相変わらずだな。死ぬに死ねない体はどうだ?何回、私以外に抱かれた?なぁ…アスマ。」



顎を掴まれ、至近距離で見た顔は、正しくオレを呼びだした時の王そのもので、違うところがあるとすれば、生まれた国が敵側ということと、名前が違うということだけ。

久々に呼ばれた名前は、王が失脚する数ヶ月前から呼び出した。
急に、抱き方が変わってきたのもこの頃だ。
抱き方、というにはやはり犯すが正しいが…。
その頃には、すでに手を失っている状況だった。



「陛下、お目当てのものは見つかりましたか?」

「あぁ。見つけた。」

「では、祖国に帰りましょう。」

「そうだな。」

「この姫たちはどうしますか?」

「殺せ。」

「は?」

「少しでも、不安の芽があってはならない。王道など私が進むと思うか?血まみれてこその勝利だ。殺せ。」

「御意。」



兵士に捕まえられた姫君たちは、一様に恐怖の表情を浮かべて命乞いをしていた。
そして、次々と首が落とされていくのを、オレは抱え上げられた王の腕の中から見た。



「お前の望みの1つだろう?『国の滅亡』。喜んだらどうだ?」



上がる赤い飛沫に表情一つ変えずに一瞥くれると、王はオレを抱いて後宮から出ていった。

耳に残る悲鳴、命乞いの声、首の落ちる音、血の匂い…。
いつまで経っても耳に、鼻に残っていた。



「城へ帰ったら、お前だけの特別な部屋へ案内しよう。それから、声と両手は戻してやろう。」



王の声が遠く聞こえた。



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あきゅろす。
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