狂気ノ噺
5*
それでもおれは理性で堪えようとした。
失いたくはないから。
なのに…
「あ、おかえりなさい。」
「っ!……ただい、ま」
ヒロはいつものように血の香を纏って近づいてくる。
嗚呼…堪えられない。
「シュウ?」
「先、謝っとく。ごめん。おれ、きっと酷いこと、する。」
「え?うわっ!んぶっ…」
声を上げさせないようにしてから、おれの部屋へ帰り、ベッドの上に落とす。
「し、シュウ?どうしたんですか?」
「食べていい?」
「え…、んむっ!ん…あ…む…んちゅ……」
尋ねといて答えは聞かない。
聞いてもきっと止まらない。
ごめん、ごめんね。
でもどうか嫌いにならないで…
「ふっ…んあ、しゅ……しゅ、う」
「ごめんね。」
手首の傷にキスを落とし、かさぶたになったそれを塗り替えるように噛み付く。
「いっ…!」
流れ出る蜜は、予想した以上に甘く、悲しく、優しくて儚い味がした。
まるで、麻薬のように身体の熱が上がる。
「シュウ…」
「ヒロ?」
「いいよ。」
「え?」
「好きなように、しな。僕はいつまで生きてるかわかりません。今、シュウがしたいことをしてください。」
後悔する前に、とヒロは過去を垣間見せた。
おれは理性を捨てた。
ヒロの服をたくしあげ、小さな粒を転がす。
びくっと身体を揺らす姿が可愛くて、もう片方は口で転がす。
大好き、大好き。
ヒロが大好き。
だから細胞単位で繋がりたくて、さなかに強く噛み付く。
胸の刺激で反応仕掛かったヒロのものに嬉しくなって、全部脱がしてヒロのを口に含む。
赤い蜜以外の蜜は味わったことないけど、ヒロのは大丈夫だろう。
ちゅく…じゅ…じゅる…
「っ!あっ…ダメっ!吸わな…あっ、ひっ!」
頭に添えられたヒロの手が暖かい。
そして蜜の甘い香がおれを興奮させる。
じゅる…
「い、あっ!イ、っく…離し、イっちゃうっ!!」
少し歯を立てれば、口の中にどくりと白い蜜が放たれる。
嗚呼…やっぱり甘い。
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