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狂気ノ噺
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夜になり街を歩く。
最近、クイーンが狩りをしたらしくあまり人はいない。



「おい、兄ちゃん。」



振り返れば警官が二人。



「最近、また首狩り女王が出たから帰んな。狩られちまうよ?」



なんだ。
そんなことか。

おれは無言で歩き出す。
一つ路地を曲がれば小柄な男の子がいた。
おれを見つけるとニコリと笑う。



「俺を買ってくれませんか?」



不愉快だ。
けど、なんかヒロの香りと似ていたから買った。

ホテルとは言えない廃屋のベッドで男の子はなまめかしく啼いた。



「あぁん!あっ…!」



涙を流す男の子。
快楽に蕩けた無意識下で男の子が叫ぶ。



「っあぁ!ま、ひろっ、まひ、ひぁっ、ヒロ、ヒロッ!!!!」



ぎちゅ、っと締め付けられ萎えているおれのものを抜く。
男の子はイって意識を失っている。
そして、首に噛み付き血を飲む。

嗚呼…悲しい味。
大切な者を失って自分すら失ってしまった悲しい味。
でも、どこかヒロと似た甘い蜜。
彼はきっとヒロの血縁者。
それか、ヒロを大切に思っていた者。
だけど悪いが…。



「ヒロは渡さない。」



味見を終え、血を抜いて容器に吸い取っていく。
次第に容器は赤い蜜でいっぱいになり、元の器が空っぽになった。

綺麗な赤。
悲しみが生んだ味は苦く甘い。
おれの好きな味だ。



「帰ろ。」



でも、どこか満たされないおれがいる。
蜜は飲んだ。
いつもより多いくらいには…。
なのに飢える。
満たされない。
渇いて仕方ない。
どうして?
何故?

そして思い至る。



「ヒロ…」



あの赤い蜜に…いや、あの存在に恋い焦がれてる。

失墜してもいい。
追放されてもいい。
それでも禁断の甘い存在に酔いしれ溺れたい。

きっと楽園を追い出されたあの二人もこんな気持ちだったんだろう。



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あきゅろす。
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