狂気ノ噺
2
〜柊Side〜
最近の朝は騒がしい。
理由は単純明解だ。
「ちょっと死んできます。」
「ヒロちゃん!」
嗚呼…ヒロと、ユキの声だ。
それとヒロがいつも纏う甘い甘い蜜の香り。
のそりとベッドから起きて、下だけジーンズを履いて部屋から出る。
「あぁもぉ!シュウも何か言ってやってよぉ!」
「………はよ?」
「うん、おはよぉ…じゃなくてぇ!!」
おれはそっとヒロに抱き着いてその手に持っていたロープを奪う。
「は、離してください!あぁ!僕のロープ!」
「だめ、ヒロ死んだら、飲めない」
ぺろりと首筋を舐める。
ひくりとしたヒロが可愛い。
出会った時感じた。
ヒロの命の赤は焦がれるほどに甘いだろう、と。
でもその赤に舌を延ばすのは禁忌な気がした。
今まで何十人もの赤に酔いしれたが、ヒロの味は麻薬のようで歯止めがきかなくなり、他の奴らと同じように殺してしまう。
ヒロは自殺願望者だから、誰かの手に掛かって死ぬのは本望じゃないだろうし。
「シュウ…」
「ん?」
「離れてください。その、目のやり場に…」
ごにょごにょと呟いて、おれが半裸なことが恥ずかしいのだとわかった。
きゅっと少し力を込めてから、ヒロから離れる。
少し寂しいけど、仕方ない。
と、その途端くらりと目眩に襲われる。
「っ!」
「シュウぅ、朝ご飯まだ食べてないんでしょお?」
そういえばまだだ。
コクリと頷く。
「食べといでよぉ?基本食と、甘ぁい蜜ぅ。」
「……ん」
そう言っておれを撫でるユキからも血の匂いがした。
「あはぁ…バレたかぁ。なら尚更食べといでぇ。」
ユキにコクリと頷き、ヒロのほっぺにキスをして部屋へ帰った。
ユキもクレイジーハウスにいるだけあって、狂ってるからいつも血の匂いを纏ってる。
むろん、おれも…。
ぐぅぅ〜…
「お腹、すいた」
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