狂気ノ噺
7
「ただいま。」
「…ぉかえりなさい。」
今までなら返って来なかった返事に自然と頬が緩む。
狂っても幸福って感じれるんだ。
眠たそうに目を擦るヒロの姿が可愛い。
まぁ、今、夜中だしね。
本来人は日中活動するものだし。
末期の自殺願望者ってとこを抜けば、一般人とかわりないから、ヒロは。
死ぬの勿体ないのに…。
「クイ…」
「岬。」
「ゴメ…岬、血の…臭いするよ?」
「俺の血じゃないから。」
「ホント?」
眠たそうなヒロは、いつも以上に素直になる。
そして、人一倍他人が傷つくことに怯える。
前、賞金稼ぎだったターゲットを狩った時、怪我して帰ったら、真っ青な顔で何度も何度も謝ってきた。
別に、ヒロのせいじゃないのに。
それ以来、俺たちの中で怪我をしない、という暗黙のルールができた。
それでもヒロは、心配らしく部屋までついて来て体を調べようとする。
甘んじて受け入れるけど実はかなり理性が限界だったり。
「本当。今日は首をホルマリン漬けにしたら寝るから、部屋に帰りな。」
「やだ。」
「ヒロ、お前は聞き分けのないガキか?」
「…だって、嘘は……」
「本当だって言ってるんだ。少しは信よ、ヒロ!」
カタカタと震えるヒロ。
体を自分自身で抱きしめて、小さな声で「殺して殺して」と繰り返す。
「ヒロ、ヒロ!」
「いやあぁぁぁ!」
ヒロが常備しているリストカットのためのカッターがひらめいて、俺の頬に赤い傷をつくった。
「真広ッ!」
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