学園ノ噺 3 なんか、入学する場所間違えた気がしてきた。 前途多難すぎて、明日どころか今日すら見えないよ、父さん、母さん、凜太郎(柴犬)。 「ま、そうはいっても、ベクトル向けられるのは、顔のいい子ばかりだから大丈夫だよ。」 「そうですね。オレ、今日初めて平凡顔で生まれてきたことに感謝してますよ。」 「まぁ、可能性が0とは言えない所が難点だけどね。」 「えー…。」 「恋したら、相手のどんな顔も可愛く見えちゃうからね。」 「因みに寮監さんは?」 「あぁ。オレ、これでも外に彼女いるからね。ほら」 見せつけられた左薬指のリングがきらりと光り、俺には眩しかった。 おそらく、ペアリングだ。 「いいなぁ。」 「ふふ、いいでしょ。さて、君の同室者の話をしようか。」 「あ〜い。」 飲み終わった紅茶を淹れ直してもらった後、少し姿勢を正す。 「君の同室者の名前は、峰岸美季。別名、誘惑の天使。」 「何、その中二病的な名前。」 「ネーミングした人に言ってあげてよ。でも、あながち外れてないから怖いんだよね。」 「はぁ。」 「彼は、芸術の特待生なんだっていったよね。」 「はい。」 「彼が得意なのはダンス。洋でも和でも、幅広く全て突出して踊れる。その踊りときたら…」 「誘惑しているよう?」 「そう。で、タチの悪いことに、彼はそれを利用して近づく男を片っ端から食ってるんだ。」 「…つまり、」 「誘い込んで、セックス。」 「…それ、ただのヤリチンじゃん。」 「ちょっと違うかな。ビッチの方が正確。」 はい?ビッチって女に使うんじゃ? それを抜きにしても、どこが天使なんだかさっぱりわからない。 第一、 オレの顔じゃ誘惑されないし、されたとしても興味ないからのらないだろう。 「ちなみに、彼、ノンケの子まで誘惑して食っちゃうから。」 …まさに魔性。 さっき見た人たちのどちらがそうなのかは知らないが、魔性が服を着て歩いているのと大差ないな。 「寮監さん、オレ、部屋変えたいです。」 「あー…それなんだけど、今、全室満員でね。外部生が豊作で、定員ぎりぎりまでいるんだよ。」 「交代したいって人いるんじゃないですか?その誑し込まれた人の中に。」 「それは、何度も誑し込まれた人に言われてるんだけど、誑し込んだ本人が『ただヤっただけで同室なんて迷惑。』って一蹴しちゃってね。」 「なんてやつだ…。」 「いい子だし、悪い子じゃないんだけど、性生活だけがね…。」 「爛れまくりですね。」 「…今日だけなら、泊まってってもいいよ。」 「ほ、ほんとですか!?」 うん、と頷いてくれる寮監さんが神様に見えた。 こういう人になら、ころっといっちゃうかもしれない。 そう考えたところで自己嫌悪に陥り、早くもこの学校に入学したことを後悔し始めていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |